くそっ、やられた!よりにもよってバシリスカ様の武器を!
非常ベルが鳴り響き、異形の者たちが血相を変えて走る。
ひとつ出遅れた異形がふらりと現れ、彼らに呑気に尋ねた。
あのー、俺寝ちゃってたんですけど……何があったんです?
『ストレートフラッシュ』だ!
予告状通り、この武器庫に現れたんだ!!
場面は変わり、二人の侵入者…少年少女が鉄製の通路を駆け抜ける。
一人が体術で追手を散らしていく。
先行するもう一人は大きな杖(盗品)を抱えながら逃走に徹する。
ねえちょっとむこう数多すぎるよ!?
敵の拠点とはいえ どうなってんの!?
そっか、お前潜入は初めてだったな。
よくある光景だからじきに慣れる。
それでアイン、どうやってここから抜けるの?トリック?変装?
夢の見すぎだ。
長くやってるぼくでも変装なんて技術ないんだぞ。
やりとりの合間に後手の少年が背後を確認した。まだかなりの数に張り付かれている。
間もなく二人は開けた部屋に出て、そこにはもっと多い待ち伏せがいた。
はじめましてネズミさん!
ここから逃げられると思わないことね!
踏み込んでしまった新人の口から気の入った気の抜けた声が漏れる。
動揺を隠せない一方とは対照的に、手慣れているもう一方の声は余裕に満ちていた。
ぼくらは怪盗じゃない。戦稼業の『魔賊』だ。
正面突破が礼儀ってもんだぜ!
ライフル銃を持った少年アインは手ごろな壁を蹴って宙返り、背面を向いた一瞬のうちに弾丸を放った。
無茶な体勢から撃ち出された鉛玉が通路内のあらぬ方向へ飛び……
魔法でさらに無茶な軌道を描き、凶悪極まりない跳弾と化す!
追ってきていた者を一掃!
今度は柱を蹴って落下角度を整え、得物を剣に持ち替えると、
敵の多さに慌てる少女と背中合わせになる形で降り立つ。
確かに数はすごいからな、焦るのも無理はない。
だけどな、ツヴァイ。この前だって一人で戦えてたじゃないか。
ようするにいつも通りでいいのさ!
その言葉に少女ツヴァイは普通に怪人を蹴ったり殴ったりしていたことを思い出す。
――考えてみればいつだって強硬手段だった!
落ち着きを取り戻した少女がようやく杖を構えた。
目線を通わせて仄かに笑いあい、二人は同時に飛び出す!