第2話

文字数 674文字

 硬く重い一撃を頭に喰らった。それが拳によるものなのか、脚だったのか、何か道具を使ったのかも認識できなかった。ケータイは手から離れてしまった。俺は路上に倒れた。そのまま暗闇の中に身を没しそうになる。
「おやおや強いねぇ。全盛期は過ぎたとはいえ、あたしの攻撃を喰らっても、まだ意識があるなんて」
 意識が朦朧とする。身体が言うことをきかない。あれを使うしかないんだ。筋肉ハンターの中では反則とされているもの、逆ステロイド。これは筋細胞を完全に抹消する薬品だ。俺の改造したケータイに暗証番号を入力すれば、逆ステロイドが充填された注射針を発射できる。でもケータイのところまで這って行く気力なんてない。
「ぼうや、人生最後の、そして冥土の土産は何がいい? 重い拳? 居合い切りのような上段蹴り? ヘッドバット?」
 ババアは話し続ける。俺はうつ伏せのままだから、その姿が見えない。
「もしかして死んだ? あたしゃがっかりだよ。もう少し骨のある奴だと思ったけどね。最近のハンターは何だい? 皆すぐに倒れるじゃないか。あんたで、五十三人目だよ。しょぼいねぇ。ま、あたしの良いコレクションになったけどさ。昔はこの辺も筋肉の聖地、いや、筋肉爆裂地帯なんて呼ばれててね。それが、いつのまにか弱っちいハンターの楽園じゃないか。説教したかったけど、筋肉ハンターだからね、戦ってやったの。そしてら生意気な口ばかり叩くもんだから、筋肉を残らず剥いでやったのさ。ま、あたしは帰って来たけど、以前のあたしのようにはならないね。あたしは筋肉ハンターをハントするのがこのところの楽しみなのさ」
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