第10話

文字数 362文字

 そもそもぼくは、「大きな鳥」の秘密を頭部に物理的に埋め込まれていることから、追跡を受け、頭部を梁から縄で吊るされたのだった。
 物理的に埋め込まれた、というのは、ぼくが脳神経回路上でそれを恣意的にサーキュレートできないことを意味している。
 一方で、その秘密は外部から取り出す方法も明瞭ではない。そもそも、ぼくからいわせれば、実際にぼくにそんな秘密が埋蔵されているとは信じられない。
 とにかく、追跡者は、いかなる情報によるものか、ぼくの頭部に「大きな鳥」にかかわる根幹的な鍵が秘匿されていると信じている。
 彼らは、ぼくの頭部を体から切断し、梁から吊るした。そのようにして、秘密が「垂れて」くるのを待ち受けることにしたのだ。

 からだが腐敗溶解消失してもまだ、ぼくの頭部は首の切断面の粗雑な赤さは別として、瑕疵なく保たれていた……
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