第11話

文字数 331文字

 「大きな鳥」にはつねに鳥の声がしていた。その声は、あふれかえるような轟音となることもあれば、小雨のように静かなこともあった。
 「大きな鳥」には何千万という鳥がいて、絶えず声を響かせていたが、不思議なことに誰も一羽の鳥も見たことがない。
 「大きな鳥」はゲットー(隔離地域)であり、それはトーキョー郊外に広大な廃墟同然の街として存在している。正確な調査は及んでいないが、数十万という人々がそこに住み、外部との連絡を絶たれ、閉じ込められるように貧困な生活をしている。
 外部の人々は彼らを差別し、気味悪がって「鳥」と蔑称していた。あいつらは人間ではない、人類ではない、鳥だと。
 鳥類と蔑まれる人々が暮らす、鳥の声が支配するその地域を、域外の人間が「大きな鳥」と呼んだ。
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