首(6/23)

文字数 453文字

首が落ちている
田舎の土の道
朝の散歩から戻る途中のこと
行きにはなかった

生首ではなく
マネキンのようなのだが
精工にできている

先を見ると
所々に落ちており
全てが私を見ている
誰かが置いたか
土から生えたか
空から降ったか

一つ目を拾う
二つ目も拾う
三つ目は拾わない

田舎に住むようになり
朝と夕に散歩するようになってから
野草や山菜を摘んだり
農家さんが捨てる野菜を分けてくれるので
大きな籠を背負っている

籠に首を入れていく

一つ目と二つ目は
良く知っている顔だったので拾った
三つ目は知らない

手に持つと
ほんのりと血色が浮かび
マネキンなのに
生きているかのような気がする

四つ目も知らない
五つ目は父
六つ目は母
家を出てから会っていないけれど
とりあえず拾う

知らないから
拾わなかった二つが
記憶の奥底で結びついたので
戻って拾う
名前は思い出せないのだが
世話になった人だ

籠がいっぱいになったら
その先の首は道から消えた

慌てて背中の籠を確認する
石がごろごろ……
ではなく
首がごろごろと入っている

田舎暮らしをしていると
空っぽになった時に
大切なものを思い出すことがある
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