バジルⅠ(6/14)

文字数 487文字

スーパーで買い物をしたら
スイートバジルの苗をもらった

昨年も同じ催しがあったのだが
枯らすのが目に見えていたので
受け取りを断った

だけど
今年は迷うことなく受け取った

この一年で
僕の性質は基本的変わっていないから
枯らすのは目に見えているのだが
それなのに
手にしたのは心持ちのせいだろう

こんなにも外に出られない日々が続くなんて
思いもしなかったので
一年の月日が流れて
緑が欲しいと思ったのだ

育てる自信はない
枯らしてしまう自信はある
それでも
緑の葉に心を掴まれてしまい
迷うことなく受け取った

ベランダに置くと
場違いな感じがするけれど
部屋の中から眺めれば
場違いな感じがとてもいい

一人暮らしのマンションに
生きているものは
僕とバジルだけ
動くはずもないのに
気になって
ちらりちらりと確認する

そこにいるだけでいい
動かなくても
話せなくても
笑わなくても
そこにいるだけでいい

知らず知らずに
疲れていて
目で味わう緑に癒される

遠くに見える山々の緑もいいが
すぐそこにいて
小さな葉を広げるバジルは
僕だけの緑だ

大きく変えることばかり考えていた
小さく加えるだけで
こんなにも大きく変わるとは考えたこともなかった

植え替え用の鉢を買った
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