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文字数 442文字

「――わたししか、救ってあげることができなかったのに、止めることができませんでした」
「暴力は日常的に?」
「はい」
「絵梨香ちゃんは唐揚げを喉に詰まらせて亡くなったことは聞いてるね?」
「ええ。……篤史が暴力を一番最初にふるった日のことをよく覚えています。わたしの作った豆腐ハンバーグをつかんで、絵梨香の口に押さえつけて、食べないと……張り倒したんです」
「こういうことがよくあったと?」
「……はい。唐揚げを買ってきたのはわたしですけど、まさか、こんなことになるなんて。わたしがあの子を連れて出て行っていれば……わたしの責任でもあるんです」

 心の中も、頭の中も、篤史で満たされていたことを、絵梨香が気づいていたのだと思うと切ない。
 留置場の硬い布団の中で、一睡もしないで絵梨香と過ごした日々を振り返った。
 4年という短い期間でも一晩では足りない。
 隅に追いやられていた絵梨香はどんな気持ちでこの世を去ったのか。

 早苗は、篤史と二人で罪を背負っていくことを胸に誓った。
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