それじゃあ、口調を変えて行ってくるぜ!

文字数 1,759文字

最高のカレーうどんが食べたいんじゃぁ
へへっ、その台詞を繰り返すってこたぁ、何もくれる気はねえって事だな!
最高のカレーうどんが食べたいんじゃぁ
わぁってるて! 王様、任せておきなっ!
俺っちが最高のカレーうどんを食べさせてやるよっ!

さっ、俺っちの背中を見失うんじゃねえぜっ!!
最高のカレーうどんが食べたいんじゃぁ
へへへ……。頑固な王様もいたもんだっ!
俺っちのお師匠(おっしょ)さんよりも頑固かもしんねぇなっ!

その返事があったら「はい」と言ったと見なすぜ? いいな、王様っち!
最高のカレーうどんが食べたいんじゃぁ
わーった、わーった。俺っちが悪かったよ。
さっ、早速オフィス街に着いたぞ。ここは通勤時のサラリーマンでごった返す。
注意して歩くんだぞ! いいな、王様っち!
ボサこいて肩なんてぶつけてんじゃ……
おっ、すいません。ぶつかってしまいました。
最高のカレーうどんが食べたいんじゃぁっ!!
チッチッチッチ、王様っち! 寝ぼけた様な歩きを見せた方が悪いって相場が決まってらあ!
早くここを通り抜けるぞ! そして、あの学園の内部に入るんだ。
心配いらねえぞ、単なる近道だ!
きゃっ!?
おおっ! 済まねえな……。俺っちと来たことが。
王様の様子を見ぃ見ぃで、前が見えてなかったかぁっ!

済まねえな、姉ちゃん。これで美味しいもんでも食べな!
っ!? 
こ……これって金ですか? 金の硬貨なんて貰えません><
いいってもんよ。俺っちたちの国では珍しいもんじゃねえ。
うまいもんでもゲームの課金でも何にでも使いねぇっ!
じゃっ、彼氏さんによろしくなぁっ!
あ……あのぅ……おっ、お名前だけでも……。
板前野郎。ただ、それだけの事よ!
あばよっ!
最高のカレーうどんが食べたいんじゃぁ
(最高のカレー……うどん……。後を着けてみよっと!)
王様っち! そろそろ最高のカレーうどんを出す店に着くぞ!
板前野郎の俺っちが唸るほどのカレーうどんが王様っちを待ってるっち!
(あ……口癖を間違えてる……、きっと疲れが出てるんだわ。
 遠くの国から来た人たちっぽいし……)
(やべえ、口癖を間違ったっち!)
最高のカレーうどんが食べたいんじゃぁ
さ、着いたぜ。ここが最高のカレーうどんを出す店だぁっ!
その名も「吉松屋」だ! 聞いておどれえたかっ!
(あっ、吉松屋に入った。最高のカレーうどんを食べにチェーン店へ!?)
大将! カレーうどん一つ!
はい、お待ちどう様です。
これはよぉ、確かに何の変哲もねえカレーうどんよ。
でも、王様っち。啜ってみねえっ!
(王様っち……王様なら舌が肥えてるはず! このカレーうどんじゃあ……)ドキドキ
……ズルッ……ジュルルルルルッ!
味を聞くなんて無粋な真似は……よしておこうかっ。
豚肉の臭みを少量のナツメグで消し去っている……いや旨味を増すためだろうか。
ガラムマサラの配分も絶妙で妙味を醸し出している事には疑いの余地はない。
早くて安くて美味しい。それでいて、一切の手抜きを感じさせない。
勤勉な労働者……いや、吉松屋さんの板前さんと呼ばせてもらおうか。
彼の熟練の技巧がなせる最高の温度・スープとうどんの絡み具合。
この様に口が寿(ことほ)ぐのは何年ぶりだろうか……。
そんな御託はいらねえぜ、王様っち。素直に「うめえ」の一言でいいじゃねえか!
まっ、早ぇ話、は「空腹は最高のスパイス」ってぇヤツだな!
はっはっはっはっは!
 肉体労働から頭脳労働へと変遷していく現代日本。単に運動をしているだけで「スポーツエリート」と呼ばれるくらいに、運動不足が深刻化してきている。
 確かにこの話は単なる創作に過ぎない。しかし、最高に疲れて、最高に腹が減って、それこそ貪る様に物を食べた経験がある人こそ少なくなってきているのではないだろうか。
 朝はもっと寝たいから食べない。仕事が多くて食べる暇がない。夜の食べ物は肥満の原因! そんな思考はある意味正しいのかもしれない。しかし、この王様の様に真に空腹になった人間は何でも美味しく食べる事ができるのは事実だ。
 そう、運動できる自分の体に、大地や海の恵みである食べ物に、咀嚼できる歯がある事にも感謝していく必要がある。
 そして、板前野郎の様に暮らしてみるのも良いだろ。誰かの名前の語尾に「っち」を付けるなどすれば、黒歴史を健全に作る事すら可能なのかもしれない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

王様

ドンイ・サーマラ王国の第89代の王。
無類のカレーうどん好き。食べたことはない。

板前野郎⭐️銀二郎

板前野郎は板前野郎。
余計な言葉が要らない、唯一の職業。それは板前野郎。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色