それじゃあ、口調を変えて行ってくるぜ!
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豚肉の臭みを少量のナツメグで消し去っている……いや旨味を増すためだろうか。
ガラムマサラの配分も絶妙で妙味を醸し出している事には疑いの余地はない。
早くて安くて美味しい。それでいて、一切の手抜きを感じさせない。
勤勉な労働者……いや、吉松屋さんの板前さんと呼ばせてもらおうか。
彼の熟練の技巧がなせる最高の温度・スープとうどんの絡み具合。
この様に口が寿(ことほ)ぐのは何年ぶりだろうか……。
肉体労働から頭脳労働へと変遷していく現代日本。単に運動をしているだけで「スポーツエリート」と呼ばれるくらいに、運動不足が深刻化してきている。
確かにこの話は単なる創作に過ぎない。しかし、最高に疲れて、最高に腹が減って、それこそ貪る様に物を食べた経験がある人こそ少なくなってきているのではないだろうか。
朝はもっと寝たいから食べない。仕事が多くて食べる暇がない。夜の食べ物は肥満の原因! そんな思考はある意味正しいのかもしれない。しかし、この王様の様に真に空腹になった人間は何でも美味しく食べる事ができるのは事実だ。
そう、運動できる自分の体に、大地や海の恵みである食べ物に、咀嚼できる歯がある事にも感謝していく必要がある。
そして、板前野郎の様に暮らしてみるのも良いだろ。誰かの名前の語尾に「っち」を付けるなどすれば、黒歴史を健全に作る事すら可能なのかもしれない。