第1話

文字数 490文字

どうやら着いた。
僕らは荒れる海を渡り、異国の土を踏みしめた。
総勢8名の乗員は、厳しい航海にはんぶん。
4人の男が、やっとのこと、大破した舟の板切れにしがみつき、最後は泳いで辿り着いた。
2人は流された。
6人がしがみついたその板切れは、浮かばなかった。
悪いけど、ふたりは足蹴にして、流した。
僕も、誰かに蹴られていたんだから。

この国は、思いの外大きく、島の出の僕らには探索しきれそうになかった。
魚や貝、植物や果実。
幸い食べるものに恵まれ、少しずつ緊張が解れると、人恋しくなった。
いや、女が欲しかった。
集落を探す。
ばったり出くわしたが最後、女は4人にさらわれた。

ひととおり欲望が満たされると、4人は女を大事にした。
取り合って喧嘩にならないよう、女を女王とした。
男たちは、競って食い物を集め、洒脱な住処を作った。
女王は、それを順番に楽しんだ。
満たされていた。
最初は恐怖から、その後は満足により、女王は口を聞かずに1年を過ごした。

子供が産まれた。
誰の子かはわからない。
4人はおろおろするなか、女王は自力で産み落とした。
「めんこい子よのう」
驚いた事に、女王は僕らの故郷のことばに似た言葉を発した。
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