第3話

文字数 280文字

メロスは笑っていた。
走らず、歩いた。
喉が乾けば酒のんで。
だって、約束なんて、忘れる為のものだから。

ひと月遅れて着いた頃、ぶくぶくに太ったメロスは、痛風に悩まされていた。
友はとうに処され、墓に手を合わせる時

ああ、我らの友情は分かち合う
君は死ぬまでの痛みを、僕は死ぬ程の痛みを!

王は死んでいた。
痛風の痛みに耐えかね、自ら命を絶ったそうだ。

メロスは、ふたりに同情した。
おれがもすこし早くついてれば、ふたりとも死なずに済んだのに。
妹夫婦に、そう言った。

しかし、本心は逆だった。
彼の全身は、死んだほうがマシなくらいにくまなく痛かった。

処刑に自殺。
なんと羨ましいのだろう。
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