導入

文字数 752文字

 夢、”睡眠中あたかも現実の経験であるかのように感じる、一連の観念や心像のこと””将来実現させたいと思っている事柄”(大辞泉)。  
 人は自然に夢を見る。呼吸するかのように、意識しないままに、たゆたうままに。しかし、時に人はそんな夢を操る。明晰夢。人は夢を夢と認識したままに、自由自在に夢を操ることができる能力を有しているのだ。
 人がそういった明晰夢を意識的に発現させられるようになったのは、いつのころからだっただろうか。始まりはどこの誰だかわからないたった一人、もしくは数人の人だったかもしれない。こういう場合もシンギュラリティと呼ぶのかはわからない。ただ自由に夢を扱う能力は爆発的に広がり、瞬く間に迷信から科学へと分類を変えた。
 科学は人の生活を豊かにする。だからこそ科学は金になる。電気・磁気、医学・美容、AI・機械化。これらと同じように、それ以上に夢科学と呼ばれる分野は金になった。なりたい職業に、それも超一流としてなることができる。高嶺の花がすり寄ってくる。どんなものでも好きなだけ飲み食いできる。文字通り、どんな「夢」でも叶えられるのだ。当然だろう。金になれば、国はそれを規制するのもまた当然の流れだった。原理が理解できないままに楽しまれていた夢は、その制御が可能になるや否や、各国はその使用に制限をかけた。現実世界における健康や経済のためだとか、危険性が多く孕んでいる可能性が高いだとか、理由はそれぞれだったが規制をし、制度化し、夢を見ることに使用料金を設定することに決めたのだった。
 反発はあった者の、それでもなお、各国の目論見通り、夢の使用が留まることはなかった。あたりまえだ。お金を払いさえすればなんでも叶う、なんでも許される。一度経験したそんな理想の世界から足を洗う人は少なかった。
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