第5話

文字数 796文字

 右大臣の姫はその日、帝と太皇太后、皇太后、皇后しか乗れない輿で入内する事となった。
 かつて初めて入内する姫は、女御となる為に入内したが、帝の后妃と言うべき女御になれない姫も存在した。それから臣下の立場が変化を遂げ、女御宣下を得て入内する様になった。つまり帝の后妃として入内する様になった。だが帝に寵を得、皇子を産まなければ皇后とはなれなかった。その為かつての姫は、どんなに高位な公卿(くぎょう)の姫でも、里の牛車で入内した。その里の父の威厳を示し、それは絢爛豪華な牛車で、大行列を作って入内したが、輿に乗っての入内をした者はいない。
 だが帝の外戚という地位を得、飛ぶ鳥を落とす勢いの摂政の、それも溺愛される孫の姫は、かつて此の国ではあり得なかった、帝と三宮しか乗る事が許されない輿に乗って、初めての参内であるにも関わらず、皇后という位を得て入内する。
 衛府に属す駕輿丁に担がれ、乗馬する貴族や華やかな牛車、猛々しい護衛の随身、そして伴の者達を従え、皇后として天下に知らしめながら、長い入内行列は果てしなく続く………。
 豊かなる国の豊かな民達は、その今までに無い華やかな行列を、商売の手を休め又は遠方よりわざわざ来て、賑わいを持って見物した。

 その絢爛豪華な入内行列は、現在の摂政家の権勢を誇示している………。

 皇后として入内した摂政家の姫は、宮城門を入って後宮に向かった。
 だが宮中は馬や牛車で参内する事はできないから、付き従った者達は宮城門で、一旦馬や牛車から降りなくてはならなかった。そのまま参内するには帝から、功人を労わる事を目的とする牛車の宣旨や、人で引く輦車(てぐるま)の宣旨が必要で、摂政家の跡取りである右大臣の正妻の、姫の生母が輦車宣旨を受けているから、宮城門で車を乗り換えて後宮へと向かった。その後を摂政が選んだ貴族の娘や、摂政家でずっと姫に仕えた信頼のおける女房達が、歩いて後宮へと追って行く。
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