4.

文字数 936文字

 その後、マサトくんとは今も続いている。
 愛するマサトくんは、ちょっと前から新しい不幸を味わっている。私に新しい恋人ができたのだ。
 私は時々、貧乏神の性質のままに、マサトくんが稼いだお金を新しい恋人のために持ち出す。マサトくんは多分気が付いているけど、何も言わない。
 どうしてかというと、マサトくんは私にも内緒で、その苦悩をもとに、恋愛小説という新境地に挑戦しているのだ。
 マサトくんの心の中には、この苦悩をもっと味わいたい気持ちと、味わいたくない気持ちと、両方があるらしい。
 私のほうも、新しい恋人と別れるつもりなんかない。
 だって、別れたりなんかしたら、マサトくんが以前私が愛した人達のように死んじゃうかもしれないし、それに新しい彼氏くんはミュージシャンの卵で、才能もあってかっこいいのだ。
 それどころか、さらにもう一人か二人、かわいい男の子と付き合ってもいいかなとさえ思っている。
 理由はふたつ。ひとつめは、私はもともとが恋愛体質なので、恋をすればするほど毎日の生活が充実する。
 ふたつめは、恋人達のためだ。マサトくんは、前よりもいくらか元気になったけど、もうちょっと顔色が良くなっても良いような気がしている。
 新しい彼氏くんのほうも、私と付き合い始めたせいで身にかかる不運が増えて、身体的にも精神的にもダメージが蓄積されつつある。
 私がもたらす不幸が、彼の音楽を高めるのに一役買っているのは確かなのだが、マサトくんと違って、こっちは体を使う仕事だから、ちょっと気を付けてあげなければいけない。
 つまり、この二人だけでは、愛情の注ぎ先が足りないのだ。
 全ての恋人に対して、不運と幸運をその人に必要な分だけもたらすには、恋人の人数を少しずつ増やしながら、ちょうどいいバランスを探るしかない。
 ただ、恋人が増えるほど私は満たされ、そのせいで貧乏神としての力もパワーアップしているような気がする。
 どこまでパワーアップするのかは自分でも分からない。でも、いくらなんでも限度はあるだろう。それが五人なのか、十人なのか、またはもっとたくさんなのかは分からないけれど。
 でも、百人か二百人くらいまでなら許されるんじゃないかと思う。そのくらいなら、この世の秩序に何の影響は出ない。
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