校門に立ち「おはよう」という毎日 ~高校生の思い出~ ②

文字数 844文字

 高校一年生のセミの大合唱が耳に響く時期、学校へ行きたくなくなるような出来事が起きた。スマホのメッセージに『死ね』というコトバが何通か届く。

 連絡先は知らない番号だらけで一人に『僕は小学生です。どこの誰か知りませんがこのメッセージは僕に送っているのでしょうか?』と小学生のフリをして返信をした。

 すると『小学生? 高校生じゃないの? 俺はお前が高校生でAKAアイドルのナナちゃんと付き合ってるって言うのをきいてメッセージ送ったんだけど。小学生だったのか。お前、イジメにあってんの? それは悪かったな。』と返事が来た。

 この人とは会話が出来そうだと色々と話を聞いて、送り主を探すと同じクラスの男子がこの嘘の噂を流したと判明した。

 学校に報告すると担任の四十五歳の荻野先生から職員室に呼び出され、送り主と話をしたことを聞かされる。
「福島千春くんは高知悠斗くんを取られたから仕返しをしてしまった」と言われたそうだ。荻野先生は「これは嫌がらせでもイジメでもないの。ヤキモチを焼いただけなのよ。許してあげて」とヘラヘラと笑いながら言った。

 僕は無表情のまま先生を真っ直ぐとみると先生は目を逸らした。また先生のハズレを引いたのかと思い、怒りを抑えるため左手で右手手首を力いっぱい握る。そこに三十歳の部活の顧問の四月朔日(わたぬき)先生がやって来た。

「荻野先生、それは先生の価値観ですよね。自分の価値観を生徒に押し付けるのは違うと思いますよ。私は嫌がらせにもイジメにも感じます。そもそも山田くんに『死ね』というコトバが複数届いたんですよ? 人に言っていいコトバではないですよね? それを容認しろと? 先生は先生として人としてそれでいいと思っているんですか?」と言ってくれた。

 荻野先生はそのまま黙ったまま。
「山田くん、何かあったら私に言ってね。自分だけで抱え込まないでね」と四月朔日先生は微笑んだ。
「四月朔日先生がいてくれたら安心して学校に来ることが出来ます。ありがとうございます」と僕は頭を下げる。
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