第1話

文字数 672文字

 交差点のど真ん中。

 俺の周りは、たくさんの人で溢れかえっている。

 これだけならいつもの日常の光景。

 違うのは、この場にいる人、全員が止まっている事と、俺の隣を歩く妹の目の前に刃物を構える人物がいる事だ。

「はあ、はあ……。止まった?」

 そして何故か俺だけがこの止まった空間で動けた。

 確かに隣を歩く妹が刺されそうになり、止まってくれと願った。だからといって、漫画の世界じゃあるまいし、俺には時を止める力がありましたなんていう事はない。

 どちらにしても助かった。

 安堵の溜息を吐く。

 そして、すぐに周りを見回す。

 何かこの現象の手掛かりはないか。

 特に右を見ても、左を見ても何もない。後ろも何もない。ただ止まっている人がいるだけだ。
 正面を向き直す。

「やあ、ごきげんよう」

「?!」

 俺の目の前に、さっきはいなかった男性が立っていた。そして話しかけてきた。

「ははは。びっくりした?」
 
 その男性は、驚く俺を見て楽しそうに笑っている。

 こ、こいつ何者だ。

 こいつもこの現象の中で動けるみたいだし、もし何かあったら妹だけは絶対に守らないと。

 俺は妹に視線を移した。

 その俺の視線を追って、目の前の男性も俺の妹の方を見る。

「いやー、間一髪って感じだね。ほんと僕に感謝してよね」

「感謝? お前に?」

「うん。君が願ったから、それを叶えてあげたんだよ」

「これ、お前がやったのか?」

「だからそうだって」

 驚きの連続で動揺する俺を相変わらず楽しそうに見てくる。

「お前、何者だ?」

「ん? 僕?」

 そしてさらに楽しそうな表情を浮かべ、俺の問いに答えた。

「僕は神様だよ」
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登場人物紹介

・那須成 喬(ナスナシ タカシ)

 兄

 25歳

 社会人

 父親の方の連れ子

・大橋 十耶(オオハシ トヤ)

 妹

 20歳

 大学生

 母親の方の連れ子

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