神判の日 4
文字数 431文字
寝室へ入ると、顔に白い布をかけられた夫は、ちゃんと床に横たわっていた。トメは布をはぐって人差し指で額を突っついてみる。指先に冷たい感触が伝わる。夫は間違いなく昇天した。まったくもって思いがけぬ事件だった。
トメは悟った。とうとう独りぼっちになった、と。
「あなた、成仏してくださいましね」
もう一度丁寧に布を顔にかけてやり、両の手を合わせる。
トメは立ち上がり、亡骸をまたいだ。すると、布団の端に躓いた拍子に夫の右腕が布団の外へ飛び出してしまった。仕方なくパジャマの袖を右足の指で摘まみ、それを布団の中へときちんとへしこんでやった。
「ありがとうございました」
年のはじめに、“平穏な老後”を確約してくれた
情け深い
夫に感謝の言葉をかけ、鏡台の前に座ったトメは、鼻歌交じりに化粧を直し始めるのだった。