影(3/8)

文字数 310文字

踏む
なよ

突然の
怒り声に
驚く

だから
踏むなって

僕が
踏んだのは
影だ

前を
歩く
爺さんの
影が
怒っている

慌てて
立ち止まったら
後ろから

急に
止る
なよ

息子のような
学生風に
吐き捨てられる

あぁ
すみません

影が
話した驚きで
怒りなんて
湧きもしない

そんな
ことって
あるのだろうか

ぼんやりと
歩き始めると
学生風の背中に
ぶつかった

急に
止る
なよ

体格が違うから
痛いのは
僕で
彼は
びくともしない

あぁ
ごめんなさい

よく見れば
童顔で
目をぱちぱちしている

どうせ
影だろ?

驚いた顔で
何度も
首を縦に振る

僕は
微笑んで
彼に
踏んでみて
と言う

痛くも
痒くもない

僕の影は
僕の影だ

僕も
お願いします

僕は
学生風の
影を踏んだが
何ともない

彼の影は
彼の影だ

人格の違う影が
増えたら
安心して
歩けなくなる

世も
末だ
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