第5話 モノローグ

文字数 1,815文字

花澄(かすみ)の場合】

 澄はね、時々子供っぽいけど、とてもしっかりしてるの。
 私はけっこうそそっかしい方で、やらなきゃいけないことがあるとすぐに手が出てしまうけど澄は違う。すぐに行動しないで、一呼吸置いてから次の動作に移るところは見習いたいなって思ってるんだ。一緒に行動しなきゃいけないところで、そんな澄に助けられたのが一度や二度じゃないから。澄ってば格好いい。
 でも私はダメだよねー。学習能力が欠如してるんじゃないかと、毎度失敗するたびに項垂れる。澄の足を引っ張らないようにしたいから、少しずつでも頑張ろうと思う。

 あと、澄は可愛い。褒めて欲しい時のあの期待に満ちた瞳にキュンとする。
 澄は私よりも少し背が低いから、私を見るときはどうしても上目遣いになるんだけど、それをされると可愛くて甘やかしたい気持ちになる。
 頭を撫でると目を細めてうっとりするから、ついつい澄の頭に手が伸びてしまうんだけど、可愛いから仕方ない。猫みたいな仕草が可愛らしい。
 ただ、そういうときに突き刺さる視線が痛い。澄と仲の良い隣のクラスの美少女が、これまた可愛らしく私のことを睨んでくる。澄を可愛がる私が気に入らないんだろうなー。
 なんかこの二人は特別な雰囲気でどっちも可愛いし、密かに見守りたいって感じなんだよね。だからそんなにヤキモチを焼く必要はないんだよって言ってあげたいけど、ぷくーって膨れる美少女顔が可愛いので放置してる。性格悪くてごめんね!
 あと、どっちも互いを気にしてるのに何も進展してなさそうだから、もう少しだけ二人のスパイスになってみようかなと思っている。
 とにかく、澄は可愛いし格好いいし私の大事な友達なんだ。早くこの二人くっつかないかなーって思ってるのは内緒だよ!


(あや)の場合】

 澄は人間も妖怪もその他諸々、なんかもう色々たくさんの者を虜にする特技があるようで、気が休まるときがない。
 猫又ってそんなに愛されるものだっけ、と逡巡するけど、魅了の力は私のほうが強い。ということは、澄の純粋な魅力が皆を惹きつけるのだろう。気が付くと、澄の周りには見たことのない者が増えていて、仲良さそうに笑っているのだ。
 その度に、先に澄を手に入れたいと思ったのは私なのに、と怒りが湧き上がる。ただ、澄にも付き合いというものがあるだろうからあまり口に出せない。そんなときは口に出さない分、近くに行って抱きついたりしてみる。澄は優しく撫でてくれるけど、なんだかそれが適当にあしらわれている気がして悔しい。もっともっと甘やかして、私だけを見て欲しい。最近はそればかり思っている。

 澄との関係が進まないのは、この姿にも問題があると思う。
 本来の姿を隠して美少女の姿で通っているのは理由があるんだけど、本当はもうやめたい。本来の姿でも目的達成できるんじゃないかということに気付いてしまったからだ。それに、本来の姿の方が周りに牽制しやすいし。美少女が凄んでも、可愛いって言われるだけだし。
 でも、実は性別も逆です、って今更言うのも怠いし、今までのは幻術でしたなんて人間に言うこともできない。仕方ないから卒業までこのまま通すことにした。澄にはもう本当の姿を見せてるし。
 幻術解いた瞬間の、目を大きく見開いた澄はとても可愛かった。辺りを見渡しても他の人たちが反応してないことを確認して、私をしっかりと見つめてふわりと笑ったんだ。
 彼女の前では偽らなくても平気だと確信して、私はもっと澄に依存した。
 きっとこれからもっと、私は澄を求めてしまうに違いない。私が澄に溺れるように、彼女も私がいなくては息もできないほどに私を求めるようになればいい。



洋介(ようすけ)の場合】

 澄ちゃんって面白いよねー。最近のお気に入り。
 この間、ほんのちょーっとちょっかいをかけたら、綾ちゃんに怒られちゃったー。遠くから駆けつけてヒーローみたいだったけど、過保護すぎるよね。ドン引き。
 あのあめ玉のこと気になってるのに、全然聞いてこないのも面白いよね。でも聞きたくても聞けないのかもねー。休み時間も帰りも綾ちゃんがべったりくっついてるし。
 あそこまでガードされると、俺も本気出さないと駄目じゃない?
 俺みたいなのには逆効果なんだよねー。そこのところ見誤っちゃうのは、綾ちゃんもまだまだだなー。
 でも、授業受けるのもダルかったけど、最近は毎日楽しい。
 澄ちゃんと綾ちゃん、俺のことをこれからももっと楽しませてよね。
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