第3話
文字数 391文字
「あっ、あの。
神咲こと私の名字を呼ぶ声に聞き覚えがある。まとも男子学生たちと関わりがないはずなのに、この声だけは誰か分かった。
“ あの男子学生 ”だ。
今現在、私たちは体育祭の練習をしている。同学年だから同じ競技に参加することも有り得るかもしれない。
男子学生には気付いていたけれど、あちらから話しかけてくれるとは思い寄らなかった。あのまま終わりを迎えるはずだったのに。
「う、うん。合ってるよ」
つい胸が高鳴り、いけないのに期待してしまう。誰が彼女さんかまでは、友達から情報を貰えなかった。“ らしき “でも半信半疑で信じてしまう。好きな人ならば尚更だ。
男子学生の肩と私の肩が当たりそうな至近距離。もし、彼女さんに見られたらどうしよう。彼女さんが困るだろうし男子学生にも迷惑をかけるよね。
うんうん、と自分自身に言い聞かせた。