第47話 暗闇の中
文字数 3,912文字
ここはどこだ……。
誰も答えてくれない疑問を口にする。
緖美を救いたい、助けたい、そう一心に願ったあとに俺の周囲の風景が突然闇に包まれた。
音が一切消えて、周りにいたはずの美月や陽女の姿も消えている。
一切の気配も感じられない闇の中に突然放り出されて、俺は状況を把握できずに戸惑っている。
ここはどこなんだ……と何度目になるか解らない問いを発してみる。
しかし広がるのは虚空ばかりで、誰も俺の問いかけに答えてはくれない。
どうしたものかと途方に暮れる俺に、不意に引っ張るような力が加わった。
真っ暗闇の中だから、どの方向に引っ張られているのかは解らない。
地面もないのだから踏ん張ることも出来ず、俺はその力に抵抗することが出来ないままどこかに移動していった。
「ねぇパパ……この大きなおうちが今日から、私のおうちなの?」
小さな女の子の声が聞こえる。
高くて混じりけのない、幼少の女の子特有の声。
「あぁそうだよ、○○○は宗家のご当主様に認められたから、今日からここに住むんだよ」
穏やかそうな男の声が、少女の問いに答える。
声の感じからいくと中年くらいなのか、落ち着いた優しいそして低い声。
聞いていると不思議と安心感すら感じるような声だった。
その声の主は、少女の名を呼んだはずなのだが、なぜかその部分はノイズがのったように聞き取れなかった。
だから少女の正体が誰なのか解らず、俺は少しモヤモヤした気持ちになった。
不意に俺を引っ張る力が消え、俺は再び闇の中に取り残された。
何が起きるのかと身構えるが、特に何かが起きるような様子もなく、俺はまた途方に暮れそうになる。
とその時、不意に目の前に映画館のスクリーンのような映像が浮かび上がる。
そのスクリーンには、40才位の着物を着た男が写されていた。
「この娘が……なるほどな。まさか分家の血筋に現れるとはな……」
和服の男は尊大な態度と口調でそういうと、傍らに立っていた黒いスーツの男を振り返る。
「名を与えてやれ。そしてすぐに沐浴をさせろ。全てが終わったら私の部屋に連れてこい」
和服の男は少女に対して興味を持つこともなく、事務的な口調でそれだけ告げるとその場を立ち去っていく。
後に残された黒いスーツの男は、銀色に輝くアタッシュケースを手にしていた。
「ご苦労だった。今後この少女は本家の人間になる」
黒いスーツの男はアタッシュケースを誰かに向かって差し出しながら言う。
「○○○がお前の娘だったという事は忘れろ。二度と口に出すことも許さない。解ったな」
黒いスーツの男にそう言われて、それに対してはいと答えたのは、先ほどの優しそうな男の声だった。
「我々のような分家筋が宗家の意向に逆らうことはいたしません。全てご指示のままに」
震える声でそう答える。
その声には、様々な感情が込められているようであったが、それを俺が知ることは出来なかった。
「どうしたの……パパ、なんで私を置いていっちゃうの?」
少女が発する縋るような声。
しかしパパと呼ばれた男は足を止めることはなかった。
必死でパパと呼びかける少女は、強引に黒いスーツの男に抱きかかえられてしまう。
「パパ……パパ……パパァ!」
悲痛な少女の叫びと共に、映像は消えてしまった。
今の映像は何だったのかと疑問を抱く。
事実はわからないが、俺にはなんとなくだけど想像できていた。
しばらくするとまた再びスクリーンと映像が浮かび上がる。
「今日からお前の名前は『緖美』だ。今までの名前は捨てろ」
新しく浮かび上がった映像は、どこかの和室のようだった。
まるで大名屋敷のようなその場所で、一段高くなっている畳の上から、先ほどの和服男がそう言っている。
「つぐ……み?ちがうよ、わたしは○○○だよ。つぐみなんて知らない」
和服男の前で正座をしていた小さな女の子が不満げにそう言う。
次の瞬間、乾いた音が辺りに響き、続いて女の子の泣き声が聞こえた。
和服男に頬を叩かれたのだと解る。
「お前に反論する権利はない。言われたことに従えば良いのだ。私に逆らうことは許さん」
泣きじゃくる少女に、容赦なく2度3度と頬を叩く和服男の姿に、俺は怒りを感じた。
今すぐ和服男に殴りかかりたい衝動を覚えたが、相手は画面の向こうの存在。
俺は何も出来ないまま、奥歯をかみしめることしか出来なかった。
どういう原理なのかは解らない、しかしどうやら俺は緖美の身に起こった出来事をみているのだと理解した。
また映像が消えて、しばらくすると今度は違う場面が映し出される。
朝から家の規則について教えられている小学生の少女。
古文書を読み術式を暗記させられている中学生の少女。
家事全般にくわえあらゆる知識をたたき込まれている少女の姿もあった。
「私には自由なんてなかった。自分で選び取る未来もなかった。ただ守藤の家のためだけに生かされた」
いつの間にか映像は消えていた。
今度は闇の中に響くように緖美の声が聞こえた。
それ箱の広い空間の中で反響して何度も繰り返し聞こえてくる。
「私は守藤の家のために生きる人形。わたしは一個の人格さえ許されないただの人形」
虚ろな声が繰り返される。
「目的を果たさねば価値のない、ただの人形」
余りにも空虚なその声に思わず反論を仕掛けたときだった。
響いていた声の質が変わった。
「そう思っていたのに……希望を持ってしまった」
「私が私として生きて良いと、貴方が教えてくれた」
「貴方が私に希望をくれた。私に光をくれた。それは生まれて初めて感じた喜び……」
少しずつ闇が消えていく。
まだまだ周囲も解らぬほどに暗い世界ではあったが、それでも黒が灰色になるように少しだけ明るく変わっていた。
「だけど、そんな希望を持ってはいけなかった。私は人形でありそして、木偶だったのだから」
「何を血迷っているの緖美。貴方は役割を果たすために存在しているのに。」
緖美の声に、緖美の声が反駁する。
緖美の心を否定するのも緖美の声だった。
「私は緖美として生きたい……家のためではなく、私の心のままに生きていきたい」
「私は朋胤さまと結ばれるために生まれ、そして生きている」
相反する気持ちが空間の中に満ちていく。
「私は私の心に従って、智春を好きになった」
「私は過去からの因縁によって朋胤様の魂を持つものに惹かれた」
緖美と緖美の声が反する言葉をぶつけ合っている。
「私は智春が好きだ」
「私は朋胤さまの寵愛を受けたいのだ」
声同士のぶつかり合いは、やがて変化をしていき、俺の目の前にふたりの女の姿が現れた。
片方は俺のよく知る緖美の姿。
もう片方は陽女によく似ているが陽女ではない女の姿。
「もうやめよう……報われない思いに執着して、今を見ないで過ごすのは辛いこと」
「私の生きる意味は朋胤さまと共にある。あのお方の寵愛を受けるそれが私の存在意義」
緖美が言い陽女に似た女がそれに答える。
「私は私の心のままに従って、智春を好きになった!」
「お前は私の思いに引きずられて、朋胤さまの魂を受け継いだものに惹かれたのだ」
「違う!朋胤なんて知らない、関係ない。私は私を認めてくれた智春が好き!」
「違わぬ、お前は私のこの思いに引きずられて紫眼の持ち主に惚れたのだ。お前の意思ではない」
涙を流しながら否定する緖美。
それおあざ笑うかのようにして見ている陽女に似た女。
「陽奈美……たしかに貴方のその想いを核にして私は生まれてきた。だけど私の心は私のもの」
「緖美……貴方は私の想いを包み込んで作られたまがい物。その心は私の心。お前の意思ではない」
必死に訴えかける緖美にそう答えて、嘲るような笑みを浮かべる女。
気持ちが揺さぶられたからか、緖美の姿が先ほどより薄くなっている。
俺はそれを黙ってみていられず思わず声を出してしまう。
「どちらがどちらじゃない、お前達は混ざり合って一つになっているのだろう。ならそれを分けることなんてできない」
俺の声に反応して、ふたりは同時に俺の方を振り返る。
その表情には明らかに困惑の色が浮かんでいた。
「なぜ……貴方がここに……」
陽奈美と呼ばれた陽女に似た女の方が口を開いた。
「智春……」
すがりつくような目で俺を見る緖美の姿がそこにあった。
「お前達は一つなんだろ、お前達が混ざり合い一つになった姿が緖美なのだろ。ならなぜ言い合う必要がある?」
俺はふたりに向かってそう問いかけた。
「お前達が混ざり合い緖美として存在するなら、お前達がそんな言い合いをする必要はない。誰だってなぜその相手を好きになったか、その理由を正確に説明できるわけじゃない。ならそれが過去からの因縁によるものでも、今現在の行動が切っ掛けになったものでも、いいじゃないか。好きという気持ちだけではダメなのか」
俺はふたりに問い変える。
俺だってこの年になるまでに、何人か気になった女性はいたし、好きだと感じたことはあった。
でもその理由は、上辺だけであれば綺麗だからとか、可愛いからだとか言う事は出来ても、本当に惹かれた理由なんてわからない。
それは今振り返っても、好きになった理由を明確に答えることなんてできない。
何かの切っ掛けがあって、気になって、そしていつの間にか好きだと感じるようになっただけだと思う。
ならその切っ掛けが、過去の因縁でも今の行動でも、そんなことはどちらでも良いのではないかとふたりに問う。
俺の言葉にふたりは言葉を失い、そして少し頭を下げて何かを考え込んでしまった。
俺はふたりがどういう結論を出すのかを、黙って見守ることに決めたのだった。
誰も答えてくれない疑問を口にする。
緖美を救いたい、助けたい、そう一心に願ったあとに俺の周囲の風景が突然闇に包まれた。
音が一切消えて、周りにいたはずの美月や陽女の姿も消えている。
一切の気配も感じられない闇の中に突然放り出されて、俺は状況を把握できずに戸惑っている。
ここはどこなんだ……と何度目になるか解らない問いを発してみる。
しかし広がるのは虚空ばかりで、誰も俺の問いかけに答えてはくれない。
どうしたものかと途方に暮れる俺に、不意に引っ張るような力が加わった。
真っ暗闇の中だから、どの方向に引っ張られているのかは解らない。
地面もないのだから踏ん張ることも出来ず、俺はその力に抵抗することが出来ないままどこかに移動していった。
「ねぇパパ……この大きなおうちが今日から、私のおうちなの?」
小さな女の子の声が聞こえる。
高くて混じりけのない、幼少の女の子特有の声。
「あぁそうだよ、○○○は宗家のご当主様に認められたから、今日からここに住むんだよ」
穏やかそうな男の声が、少女の問いに答える。
声の感じからいくと中年くらいなのか、落ち着いた優しいそして低い声。
聞いていると不思議と安心感すら感じるような声だった。
その声の主は、少女の名を呼んだはずなのだが、なぜかその部分はノイズがのったように聞き取れなかった。
だから少女の正体が誰なのか解らず、俺は少しモヤモヤした気持ちになった。
不意に俺を引っ張る力が消え、俺は再び闇の中に取り残された。
何が起きるのかと身構えるが、特に何かが起きるような様子もなく、俺はまた途方に暮れそうになる。
とその時、不意に目の前に映画館のスクリーンのような映像が浮かび上がる。
そのスクリーンには、40才位の着物を着た男が写されていた。
「この娘が……なるほどな。まさか分家の血筋に現れるとはな……」
和服の男は尊大な態度と口調でそういうと、傍らに立っていた黒いスーツの男を振り返る。
「名を与えてやれ。そしてすぐに沐浴をさせろ。全てが終わったら私の部屋に連れてこい」
和服の男は少女に対して興味を持つこともなく、事務的な口調でそれだけ告げるとその場を立ち去っていく。
後に残された黒いスーツの男は、銀色に輝くアタッシュケースを手にしていた。
「ご苦労だった。今後この少女は本家の人間になる」
黒いスーツの男はアタッシュケースを誰かに向かって差し出しながら言う。
「○○○がお前の娘だったという事は忘れろ。二度と口に出すことも許さない。解ったな」
黒いスーツの男にそう言われて、それに対してはいと答えたのは、先ほどの優しそうな男の声だった。
「我々のような分家筋が宗家の意向に逆らうことはいたしません。全てご指示のままに」
震える声でそう答える。
その声には、様々な感情が込められているようであったが、それを俺が知ることは出来なかった。
「どうしたの……パパ、なんで私を置いていっちゃうの?」
少女が発する縋るような声。
しかしパパと呼ばれた男は足を止めることはなかった。
必死でパパと呼びかける少女は、強引に黒いスーツの男に抱きかかえられてしまう。
「パパ……パパ……パパァ!」
悲痛な少女の叫びと共に、映像は消えてしまった。
今の映像は何だったのかと疑問を抱く。
事実はわからないが、俺にはなんとなくだけど想像できていた。
しばらくするとまた再びスクリーンと映像が浮かび上がる。
「今日からお前の名前は『緖美』だ。今までの名前は捨てろ」
新しく浮かび上がった映像は、どこかの和室のようだった。
まるで大名屋敷のようなその場所で、一段高くなっている畳の上から、先ほどの和服男がそう言っている。
「つぐ……み?ちがうよ、わたしは○○○だよ。つぐみなんて知らない」
和服男の前で正座をしていた小さな女の子が不満げにそう言う。
次の瞬間、乾いた音が辺りに響き、続いて女の子の泣き声が聞こえた。
和服男に頬を叩かれたのだと解る。
「お前に反論する権利はない。言われたことに従えば良いのだ。私に逆らうことは許さん」
泣きじゃくる少女に、容赦なく2度3度と頬を叩く和服男の姿に、俺は怒りを感じた。
今すぐ和服男に殴りかかりたい衝動を覚えたが、相手は画面の向こうの存在。
俺は何も出来ないまま、奥歯をかみしめることしか出来なかった。
どういう原理なのかは解らない、しかしどうやら俺は緖美の身に起こった出来事をみているのだと理解した。
また映像が消えて、しばらくすると今度は違う場面が映し出される。
朝から家の規則について教えられている小学生の少女。
古文書を読み術式を暗記させられている中学生の少女。
家事全般にくわえあらゆる知識をたたき込まれている少女の姿もあった。
「私には自由なんてなかった。自分で選び取る未来もなかった。ただ守藤の家のためだけに生かされた」
いつの間にか映像は消えていた。
今度は闇の中に響くように緖美の声が聞こえた。
それ箱の広い空間の中で反響して何度も繰り返し聞こえてくる。
「私は守藤の家のために生きる人形。わたしは一個の人格さえ許されないただの人形」
虚ろな声が繰り返される。
「目的を果たさねば価値のない、ただの人形」
余りにも空虚なその声に思わず反論を仕掛けたときだった。
響いていた声の質が変わった。
「そう思っていたのに……希望を持ってしまった」
「私が私として生きて良いと、貴方が教えてくれた」
「貴方が私に希望をくれた。私に光をくれた。それは生まれて初めて感じた喜び……」
少しずつ闇が消えていく。
まだまだ周囲も解らぬほどに暗い世界ではあったが、それでも黒が灰色になるように少しだけ明るく変わっていた。
「だけど、そんな希望を持ってはいけなかった。私は人形でありそして、木偶だったのだから」
「何を血迷っているの緖美。貴方は役割を果たすために存在しているのに。」
緖美の声に、緖美の声が反駁する。
緖美の心を否定するのも緖美の声だった。
「私は緖美として生きたい……家のためではなく、私の心のままに生きていきたい」
「私は朋胤さまと結ばれるために生まれ、そして生きている」
相反する気持ちが空間の中に満ちていく。
「私は私の心に従って、智春を好きになった」
「私は過去からの因縁によって朋胤様の魂を持つものに惹かれた」
緖美と緖美の声が反する言葉をぶつけ合っている。
「私は智春が好きだ」
「私は朋胤さまの寵愛を受けたいのだ」
声同士のぶつかり合いは、やがて変化をしていき、俺の目の前にふたりの女の姿が現れた。
片方は俺のよく知る緖美の姿。
もう片方は陽女によく似ているが陽女ではない女の姿。
「もうやめよう……報われない思いに執着して、今を見ないで過ごすのは辛いこと」
「私の生きる意味は朋胤さまと共にある。あのお方の寵愛を受けるそれが私の存在意義」
緖美が言い陽女に似た女がそれに答える。
「私は私の心のままに従って、智春を好きになった!」
「お前は私の思いに引きずられて、朋胤さまの魂を受け継いだものに惹かれたのだ」
「違う!朋胤なんて知らない、関係ない。私は私を認めてくれた智春が好き!」
「違わぬ、お前は私のこの思いに引きずられて紫眼の持ち主に惚れたのだ。お前の意思ではない」
涙を流しながら否定する緖美。
それおあざ笑うかのようにして見ている陽女に似た女。
「陽奈美……たしかに貴方のその想いを核にして私は生まれてきた。だけど私の心は私のもの」
「緖美……貴方は私の想いを包み込んで作られたまがい物。その心は私の心。お前の意思ではない」
必死に訴えかける緖美にそう答えて、嘲るような笑みを浮かべる女。
気持ちが揺さぶられたからか、緖美の姿が先ほどより薄くなっている。
俺はそれを黙ってみていられず思わず声を出してしまう。
「どちらがどちらじゃない、お前達は混ざり合って一つになっているのだろう。ならそれを分けることなんてできない」
俺の声に反応して、ふたりは同時に俺の方を振り返る。
その表情には明らかに困惑の色が浮かんでいた。
「なぜ……貴方がここに……」
陽奈美と呼ばれた陽女に似た女の方が口を開いた。
「智春……」
すがりつくような目で俺を見る緖美の姿がそこにあった。
「お前達は一つなんだろ、お前達が混ざり合い一つになった姿が緖美なのだろ。ならなぜ言い合う必要がある?」
俺はふたりに向かってそう問いかけた。
「お前達が混ざり合い緖美として存在するなら、お前達がそんな言い合いをする必要はない。誰だってなぜその相手を好きになったか、その理由を正確に説明できるわけじゃない。ならそれが過去からの因縁によるものでも、今現在の行動が切っ掛けになったものでも、いいじゃないか。好きという気持ちだけではダメなのか」
俺はふたりに問い変える。
俺だってこの年になるまでに、何人か気になった女性はいたし、好きだと感じたことはあった。
でもその理由は、上辺だけであれば綺麗だからとか、可愛いからだとか言う事は出来ても、本当に惹かれた理由なんてわからない。
それは今振り返っても、好きになった理由を明確に答えることなんてできない。
何かの切っ掛けがあって、気になって、そしていつの間にか好きだと感じるようになっただけだと思う。
ならその切っ掛けが、過去の因縁でも今の行動でも、そんなことはどちらでも良いのではないかとふたりに問う。
俺の言葉にふたりは言葉を失い、そして少し頭を下げて何かを考え込んでしまった。
俺はふたりがどういう結論を出すのかを、黙って見守ることに決めたのだった。