≪《第4節 小結》≫ 

文字数 801文字

本章では「生命中心主義とは何か」に答えるため、生命中心主義の定義(第1節)、テ
 イラーの生命中心主義の概要(第2節)、生命中心主義の有用性の検討(第3節)を行った。
 第 1 節において、生命中心主義の哲学上・環境倫理学上の位置づけ、生命中心主義の概
 略を明らかにした。
 第2節においてテイラーの生命中心主義について明らかにした。テイラーの理論では、
 生物は「それ自身が善をもつ存在」であり、ゆえに「固有価値」を持ち、人格を持った存
 在である人間は「生命中心主義的世界観」を受け入れるので、生物に対し「自然の尊重の
 態度」を持つようになり、その際の「具体的な行動規範」と「人間と利害が衝突する際の
 優先順位付け」が述べられている。ここではこれらの用語を解説し、次に生命中心主義に
 ついての疑問に答えることにより、誤解を解き、理解を深めた。
 第3節において、生命中心主義の有用性について述べた。それは、シュヴァイツアーの
「生命の畏敬」の理論化であり、自然保護理論の根拠となり、命の大切さの教育効果を持
 ち、生物多様性に貢献し、自然保護や動物保護の取組の有用性の羅針盤(コンパス)とな
 ることであった。
 人間は生命共同体の一員であり、ほかの生物と比較して優れているわけでないが、その
 特徴である知的特性ゆえに、道徳行為の主体者であり、道徳受益者でもある。これに対し
 て人間以外の生物は道徳行為の主体者ではなく、道徳の受益者たるのみである。生物はそ
 れ自身の善及び固有価値を持つ存在であり、人間が人間を尊重するのと同じように、生物
 は尊重されなければならない。したがって生物は人間と生きる権利において平等であり、
 公平に扱われねばならない。このことから、平等的生命中心主義は人間の利益のみの視点
 を離れた公平な生物の視点を持つと言え、自然保護や動物保護の取組の有効性を図る羅針
 盤としてふさわしいものと言える。
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