第4話 「回想」

文字数 329文字

 そこまで回想すると、私は真っ赤になってしまった。ホテルから移動していつものカフェにいる私の心を、真壁さんは完全に奪ってしまった。
 指が、震える。この指は、あの人がふれたもの。それなら、もうこの身はあの人のものだ……。
 そう考えるだけでうれしい。いとおしい。幸せだ。自分が、この世の誰よりも愛されているような錯覚。まだ今日会ったばかりだというのに。

 運命。ほんとうにあるのなら、きっと、真壁さんが運命の人なの……?
 私は真壁さんをこころに思い浮かべて、胸をぎゅっと抑えた。そうしないと、鼓動の苦しさと速さが周りにわかってしまうんじゃないかと思うくらいだったから。
 こんな幼稚なことを考えるなんて……私らしくないけれど、でも心地よい。
 これが、きっと恋なのね。
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