You too(7)

文字数 663文字

「できあがりました、お姫様」

 鈴木さんの言葉でこの時間の終わりが告げられるけれど。

「んー、今日もめっちゃ可愛い」

 鏡に映る自分の髪型はふんわりとしたショートカット。
 今日来た時のような攻撃的な出来る女ぽいショートボブではない。

「鈴木さん! どうしよう!! かわいい!」

 バカみたいだけど自分で自分のその姿を褒めちゃう!

「でしょ? 里穂ちゃんはフワフワなのが似合うからねー!」

 細かいところを直しつつワックスで毛先を遊ばせてくれながら右も左もチェックしてくれる。

 「気に入ってくれた?」
 「はいっ!! めちゃくちゃ」

 ありがとうございます!と鈴木さんの目を見て笑うと。

「その顔見たかったんだ」

 はい、?

「ずーっと来ないから、もう会えないのかも、て」

 鈴木さん? 
 正面から覗き込んできた鈴木さんにどうしていいかわからずに、見つめ返すだけの私に。

「、わかんない? まだ」

 え、いや、わかんない、とかじゃなくて。
 わけがわかんない、夢じゃないのか、なので。
 どうしていいのか、わかんない、わかんない?
 鈴木さん、近い近いですー!!
 端正な顔立ちがぐいっと近づいてきて。

「オレがずっと里穂ちゃんのこと好きだったの、気づいてなかったの?」

 耳元で囁かれた言葉に。

「っ、あの、私もずっと鈴木さんのことが、っ」

 言いかけた言葉は唇に当たった温もりに消えて。
 少しだけ離れた瞬間に続きの言葉を告げた。

「……好き、です」

 赤くなって微笑む鈴木さんから、また落ちてくる温もりが深くなってく。
 
 ずっと好きだった、なんて。
 ずっと同じだった。



【完】
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