その4 世界観に「困る」を足すと物語が動きだすと思う
文字数 1,900文字
最近やたらに異世界というけれど、
「別世界」ということなら、
そもそも神話や宗教って「別世界」を信じることですよね。
だから人類が
「死ぬとどうなるんだろう?」
と考えはじめた瞬間から、つまり、
人間が人間になった瞬間から、
私たちは「別世界」に心を遊ばせてきた、と言えるわけです。
架空旅行記、というジャンルがあります。
トマス・モアの『ユートピア』(1516年)とか、
ジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』(初版1726年・決定版1735年)とか。
どちらも架空の旅行記です。
お船に乗ってすごーく遠くまで行ったら、不思議な国があったよ?というおはなし。
ユートピア国そのものは、すっごく面白い場所なんですよ!
国の様子はとってもていねいに描かれています。
庭にどんなに素敵な花や野菜やぶどうが植えられているか。
きなりの麻や毛織物の服がどんなにすっきりしたスタイルか。
金や銀は卑しい金属で(笑)、金はトイレのキンカクシに使われて(笑笑)、
素朴な土器やガラスの器でお食事するのが、どんなに楽しいか。
もうね、憧れのシンプルライフ! スタイリッシュなミニマリズム!
オシャレ! 意識高い!
でね、何にびっくりしたかと言うと、
『ユートピア』、最初から最後まで、そういう説明だけなんです。
え? というね。
主人公はただ見聞きして、感心して帰ってくるだけ。
え、それだけ?! というね。
何も起こらないの。
ナッシング。
めちゃくちゃ困るじゃないですか。
そこが楽しいですよね。
いろんな困りかたするし。
眠ってるあいだに髪の毛を地面にしばりつけられたりしてね。
ま、長瀬智也さんは困ってなかったですけどね!
(あれ「クリア」っていう商品のCMだったんですね。
商品名覚えてなくてググりました笑)
でもモア先生は物語作家として売れたくて書いたわけじゃないからべつにいいですよね? ね?)
とくに「困る」のがポイントかなという気がします。
つまり、その世界とキャラクターのあいだで、何かの摩擦が起こることが。
だって、そうなると、そのキャラクターは何かしなくちゃならなくなります。
「どうする」が生じます。
「いいね!」だけだと、話が動かないってことですね。
逆に「ひどいね」「悲しいね」だけでもね。
親指アップでもダウンでも、ポチっとするだけじゃだめってことですね。
ヒツジ自身がいま、世界観を一つ思いついて、気に入って、いろいろ工夫してるのに、
物語が動きださなくて困っているところなんです。
私が困ってどうするよ。
私の愛する主人公くんよ、困れ! 頼むからもっと困ってくれ!
君が困ってくれないと私が困るんだ!!
と、困っているところです。
動きだしたら、またご報告します!)