後編
文字数 2,517文字
そして、1ヶ月がたった。ミー君はどんどん上に行ってもう見えないところまで行ってしまったので、一体何回やっているのか全く分からなかった。次にがんばっているのがモー君だった。モー君は90回パタパタを続けていた。その次がぼくで、ぼくは何とかがんばって60回を続けていた。でも、サー君が50回で、ター君が40回だったので、ぼくたち3人はあまり差がなかった。
少し前まではぼくが50回で、サー君が60回でぼくよりも少しだけ上にいた。そして、ター君は最初の2週間は30回しかやっていなかったけど、その後は40回に増やして、だんだん近づいていた。
ぼくは正直言って落ち着かなかった。とくかく、一番下にはなりたくなかった。もう、自分が食べている雲がおいしいのかまずいのかがだんだん分からなくなってきた。とりあえず、分かっていることはミー君とモー君が食べている雲よりはおいしくないけど、サー君とター君が食べている雲よりはおいしいということだった。
ある日、ター君のパタパタの回数が減って、また30回に戻ってしまった。その次の日も30回しかできなかった。そして、その次の日はさらに数が減って20回しかできなくなっていた。ター君は疲 れたような顔をしていた。
ター君はどうしたんだろう。どこか調子が悪いのかな。
ぼくはター君のことが心配になってきた。でも、本音を言えば少しだけ安心していた。ぼくはまたパタパタが減って50回しかできていなかったけど、とりあえず、ター君に抜かされる心配はなかった。サー君もぼくと同じ50回だけど、もしサー君がぼくより上に行ってもター君がいるから一番下にはならない。ぼくはそんな風に考えていた。
ター君は次の日も20回しかできずに下に落ちたままだった。
本当にどうしたのだろう。もしかしたら翼 を痛めたのかな。それとも熱があるのかな。どこか調子が悪いにちがいない。
ター君は苦しそうな顔でパタパタをしていた。10回で翼 の動きが止まってしまった。それでもター君は必死に翼 を動かそうとしていた。
ぼくは見ていられなくなってきた。
「よし、決めた。」
ぼくは小さな声でつぶやいた。
そして、ぼくは下りて、ター君の手を握 った。
「ター君、大丈夫。」
「フー君。」
ター君は少し驚 いた顔をしてこっちを見た。
「実は翼 を傷 めていて、もう限界なんだ。」
「大丈夫だよ、ター君。ぼくは今日、パタパタを50回やっている。だから2人で手をつなげば30回のところまで行けるよ。」
「そんなことをしたらぼくはいいけど。フー君は落ちてしまうよ。おいしい雲が食べられなくなってしまうよ。」
「いいんだよ。ぼく、このところずっと思っていたんだ。ぼくは一人でおいしい雲を食べるよりも、少しくらいまずくてもみんなで食べる方が楽しいなって。」
「フー君。本当にいいのかい。」
「本当にいいんだよ。だから、ター君が元気になるまで、2人でがんばろう。」
ぼくは笑顔 で答えた。そして、ター君の手を強く握 った。
その時だった。突然 、上から誰 かがぼくの手を握 ってきた。
「いいや。2人じゃない。3人だ。」
「サー君。」
ぼくとター君が同時に声を上げた。
「ぼくも君たちと一緒 だよ。3人で力を合わせればもっと上まで行けるよ。」
サー君が言った。
「サー君も本当にいいのかい。」
ター君が聞いた。
「いいんだよ。ぼくもフー君と同じだよ。」
サー君は笑顔 で答えた。ぼくたち3人はしっかりと手を握 りあった。
「ありがとう。本当にありがとう。」
ター君は何度も頭を下げた。
頭を下げるター君にサー君が言った。
「いや、謝 らなくてはいけないのはぼくの方だよ。正直に言うと、ぼくはター君が下にいるのを見て、とりあえず自分が一番下ではないって安心していたんだ。本当は君のことを心配しなくてはいけなかったのに、ぼくは自分のことしか考えていなかった。本当は友だち失格 だよ。だから、ごめん、許 して欲しい。」
そう言いながらサー君も頭を下げた。
「そんなこと、気にしなくてもいいよ。正直に言うとぼくは君たちのことを妬 んでいたよ。そして、心のどこかで下の方に落ちてきてくれたらいいのにって思っていたんだよ。だから友だち失格 なのはぼくの方だよ。」
ター君は言った。
それを聞いてぼくは言った。
「いや、ター君は悪くないよ。もしぼくが同じ立場だったら、きっとぼくもター君と同じことを考えていたと思うよ。それに正直に言うとぼくもサー君と同じようにター君が下にいるのを見て安心していたんだ。ぼくも友だち失格 だ。本当にごめん。でも、これからは違うよ。ぼくたちは一緒 だよ。」
ぼくたちはお互いの顔を見ながら、さらに手を強く握 り合った。
その時、上の方から、モー君がぼくたちの様子を少し困った顔で見ていた。
ぼくはモー君に向かって叫 んだ。
「モー君。ぼくたちのことは気にしないで、君は上に行ってくれ。ぼくたちの中でミー君に追いつけるのは君しかいないんだ。もしかしたらミー君はぼくたちのことを心配しているかもしれない。モー君は上に行って、ミー君に伝えて欲しいんだ。ぼくたちは大丈夫だから心配しないでって。それから離れていてもぼくたちはずっと友だちだよって。」
ぼくに続いて、ター君も叫 んだ。
「ぼくもミー君とモー君には、がんばって上に行って欲しいんだ。君たちを目標にぼくもがんばるよ。」
「ぼくも君たちを応援 しているよ。」
サー君も叫 んだ。
モー君はうなずいた。
「分かったよ。ありがとう、みんな。ぼくもがんばって、ミー君に追いついて、みんなの気持ちを伝えるよ。」
その日からぼくたちは3人でがんばった。ター君の翼 の痛みが治るとぼくたちは少しずつ上に上がっていった。今日は3日間3人でがんばったので、ぼくたちはまた上に上がった。
「やっぱり、上の雲はおいしいねえ。ミー君やモー君が食べている雲よりはおいしくないかもしれないけど、3日前よりは確実においしい雲を食べられている。」
サー君が言った。
「そうだね。それからやっぱり、一人で食べるよりもみんなで食べる方がおいしい。」
ター君が言った。
ぼくはター君とサー君に向かって言った。
「さあ、今日もみんなでがんばろう。」
少し前まではぼくが50回で、サー君が60回でぼくよりも少しだけ上にいた。そして、ター君は最初の2週間は30回しかやっていなかったけど、その後は40回に増やして、だんだん近づいていた。
ぼくは正直言って落ち着かなかった。とくかく、一番下にはなりたくなかった。もう、自分が食べている雲がおいしいのかまずいのかがだんだん分からなくなってきた。とりあえず、分かっていることはミー君とモー君が食べている雲よりはおいしくないけど、サー君とター君が食べている雲よりはおいしいということだった。
ある日、ター君のパタパタの回数が減って、また30回に戻ってしまった。その次の日も30回しかできなかった。そして、その次の日はさらに数が減って20回しかできなくなっていた。ター君は
ター君はどうしたんだろう。どこか調子が悪いのかな。
ぼくはター君のことが心配になってきた。でも、本音を言えば少しだけ安心していた。ぼくはまたパタパタが減って50回しかできていなかったけど、とりあえず、ター君に抜かされる心配はなかった。サー君もぼくと同じ50回だけど、もしサー君がぼくより上に行ってもター君がいるから一番下にはならない。ぼくはそんな風に考えていた。
ター君は次の日も20回しかできずに下に落ちたままだった。
本当にどうしたのだろう。もしかしたら
ター君は苦しそうな顔でパタパタをしていた。10回で
ぼくは見ていられなくなってきた。
「よし、決めた。」
ぼくは小さな声でつぶやいた。
そして、ぼくは下りて、ター君の手を
「ター君、大丈夫。」
「フー君。」
ター君は少し
「実は
「大丈夫だよ、ター君。ぼくは今日、パタパタを50回やっている。だから2人で手をつなげば30回のところまで行けるよ。」
「そんなことをしたらぼくはいいけど。フー君は落ちてしまうよ。おいしい雲が食べられなくなってしまうよ。」
「いいんだよ。ぼく、このところずっと思っていたんだ。ぼくは一人でおいしい雲を食べるよりも、少しくらいまずくてもみんなで食べる方が楽しいなって。」
「フー君。本当にいいのかい。」
「本当にいいんだよ。だから、ター君が元気になるまで、2人でがんばろう。」
ぼくは
その時だった。
「いいや。2人じゃない。3人だ。」
「サー君。」
ぼくとター君が同時に声を上げた。
「ぼくも君たちと
サー君が言った。
「サー君も本当にいいのかい。」
ター君が聞いた。
「いいんだよ。ぼくもフー君と同じだよ。」
サー君は
「ありがとう。本当にありがとう。」
ター君は何度も頭を下げた。
頭を下げるター君にサー君が言った。
「いや、
そう言いながらサー君も頭を下げた。
「そんなこと、気にしなくてもいいよ。正直に言うとぼくは君たちのことを
ター君は言った。
それを聞いてぼくは言った。
「いや、ター君は悪くないよ。もしぼくが同じ立場だったら、きっとぼくもター君と同じことを考えていたと思うよ。それに正直に言うとぼくもサー君と同じようにター君が下にいるのを見て安心していたんだ。ぼくも友だち
ぼくたちはお互いの顔を見ながら、さらに手を強く
その時、上の方から、モー君がぼくたちの様子を少し困った顔で見ていた。
ぼくはモー君に向かって
「モー君。ぼくたちのことは気にしないで、君は上に行ってくれ。ぼくたちの中でミー君に追いつけるのは君しかいないんだ。もしかしたらミー君はぼくたちのことを心配しているかもしれない。モー君は上に行って、ミー君に伝えて欲しいんだ。ぼくたちは大丈夫だから心配しないでって。それから離れていてもぼくたちはずっと友だちだよって。」
ぼくに続いて、ター君も
「ぼくもミー君とモー君には、がんばって上に行って欲しいんだ。君たちを目標にぼくもがんばるよ。」
「ぼくも君たちを
サー君も
モー君はうなずいた。
「分かったよ。ありがとう、みんな。ぼくもがんばって、ミー君に追いついて、みんなの気持ちを伝えるよ。」
その日からぼくたちは3人でがんばった。ター君の
「やっぱり、上の雲はおいしいねえ。ミー君やモー君が食べている雲よりはおいしくないかもしれないけど、3日前よりは確実においしい雲を食べられている。」
サー君が言った。
「そうだね。それからやっぱり、一人で食べるよりもみんなで食べる方がおいしい。」
ター君が言った。
ぼくはター君とサー君に向かって言った。
「さあ、今日もみんなでがんばろう。」