前編
文字数 2,705文字
ぼくは雲の妖精 。名前はフー。毎日、雲を食べて、空にふわふわと浮 いて生きている。他にやることはないけれど、退屈 だと思ったことはない。ぼくには4人の友だちがいる。名前はサー君、ター君、ミー君、モー君。ぼくたちはいつから一緒 に暮 らしているのか分からない。どうして一緒 に暮 らしいるのかも分からない。でも分かっていることはぼくたちがみんな仲良しだということだ。
ぼくはみんなと一緒 にいるだけで楽しい。つらいことや苦しいことなんてほとんどない。でも、ぼくたちには1つだけがんばらなければいけないことがある。それは寝 る前に翼 を上下に動かすことだ。ぼくたちはこれをパタパタと呼んでいる。これをやらないとぼくたちは眠 っている間に下の方に落ちてしまう。下の雲はおいしくなさそうだし、さらに下に落ちて雲がなくなると、ぼくたちは雲が食べられなくなってやがて死んでしまう。
ぼくたちの翼 は大きくて重い。だから、このパタパタは結構疲 れる。ぼくたちはいつも寝 る前にみんなで30回パタパタをやっている。なぜ、30回なのかは分からない。いつから30回なのかも分からない。気が付いた時からずっと30回だった。少ないと不安だし、それ以上やるのは大変だ。
「今日も今からみんなで寝 る前のパタパタだ。みんなでがんばろう。」
ター君が声をかけた。
「1,2,3,4,5・・・」
みんなで声を出しながら、ぼくたちはそろってパタパタ、パタパタと翼 を動かした。これを30回やると結構疲 れてしまう。でも、それが終われば後は寝 るだけだ。
パタパタを終えるとモー君はみんなに言った。
「今日も大変だったね。」
「でも、これさえやっていれば安心して眠れる。」
サー君が答えた。
「じゃあ、みんなおやすみ。」
「おやすみ。また明日ね。」
みんなでおやすみのあいさつをした。
ぐっすり眠 ったぼくたちは、朝になると気持ちよく目覚 めて、またいつもと同じように雲を食べたり、お話をしたり、ただぼんやりと空に浮 いていたりしていた。何も変わらない毎日だったけど、ぼくには何の不満もなかった。
ある日、ミー君が上の方の空をじっとながめていた。
「どうしたの、ミー君。上ばかり見て。」
「フー君、上の方の雲はどんな味がするのかな。いつも食べている雲よりもおいしいのかな。」
ぼくも上を見た。そう言われて見ると上の雲の方はおいしそうに見えた。
「おいしそうに見えるけど、どうやったら上にいけるのかな。」
「ぼく、昔聞いたことがあるんだ。パタパタの回数を増やすともっと高く浮くことできるんだって。」
「本当。でも大変じゃない。ぼくなんて30回でも疲 れてしまうのに。」
「大変だと思うけど、ぼく、やってみようと思うんだ。もしかしたら、もっとおいしい雲が食べられるかもしれないよ。今日から60回に挑戦 してみるよ。」
その日からミー君は一人だけパタパタを60回やることになった。
サー君は心配そうに声をかけた。
「ミー君、大丈夫かい。疲 れないのか。」
「ありがとう、これくらい平気だよ。」
1日目は何も起きなかった。2日目も何も起こらなかった。しかし、それでもミー君は一人で、60回のパタパタを続けた。すると、3日目の朝になるとミー君の体はぼくたちの手が届かないところまで浮 いていた。
「やった。ついに高いところに行けた。」
ミー君は喜んでさっそく高いところの雲を食べ始めた。
「おいしい。今まで食べていた雲とは違うよ。」
そう言いながらミー君は本当においしそうに雲を食べていた。
「やっぱり高いところの雲はおいしいよ。みんなも早くおいでよ。」
ミー君がぼくたちに向かって声をかけた。
「分かったよ。すぐに行くよ。」
ぼくは言った。
「よし、ぼくたちもがんばろう。」
モー君が言った。
「ぼくたちもおいしい雲を食べよう。」
サー君が言った。
「じゃあ、今日からぼくたちもパタパタを60回がんばろう。」
ター君が言った。
みんなも同じことを考えていた。今日からぼくたち4人もパタパタを60回がんばることにした。
1日目は何も起きなかった。2日目も何も起きなかった。でも3日目の朝、ぼくたちは浮いて、ミー君と同じ高さにまで上がった。
「わあい、やった。やった。」
みんなで喜 んだ。そしてさっそくぼくは雲を食べてみた。おいしかった。
「やっぱり上の雲はおいしいね。」
ター君が言った。
「うん、毎日食べたいね。」
モー君が言った。
「ミー君、ありがとう。こんなおいしい雲が食べられるようになったのは君のおかげだよ。」
ぼくは言った。
「よし、今日から毎日、みんなでパタパタを60回がんばろう。」
サー君が言った。
パタパタが前よりも大変だったけど、おいしい雲を食べて、ぼくたちはまたみんなで仲良くのんびりと空に浮 いていた。
そんなある日、またミー君は上の空を眺 めていた。
「フー君、もっと上の雲はもっとおいしいのかな。」
「分からないけど、60回でもおいしいからきっと上の雲はもっとおいしいんじゃないのかな。」
ぼくは答えた。
するとミー君が言った。
「やっぱり、フー君もそう思うかい。ぼく、今度はパタパタを1日90回ずつがんばってみようと思うんだ。」
「ええ、ミー君、60回でも大変なのに90回も大丈夫なのかい。」
ぼくは驚 いた。
「うん。ぼくはもっとおいしい雲を食べたいんだ。だから挑戦 してみるよ。」
その日からミー君はパタパタを90回がんばった。1日目は何も起きなかった。2日目も何も起きなかった。でも3日目の朝にはまたぼくたちの手が届かないところまで上がった。
ミー君はさっそく雲を食べ始めた。
「おいしい。大変だったけど、がんばって良かった。」
ミー君は喜 んでいた。
「みんな本当においしいよ。みんなにも早く味わってほしいよ。だから、早くおいでよ。」
ミー君はぼくたちに向かって叫 んだ。
「ミー君が食べている雲はおいしそうだな。」
サー君が言った。
「ぼくも上の方の雲を食べてみたいな。」
モー君が言った。
「じゃあ、ぼくたちもがんばってみようか。」
ぼくが言った。
「今日から90回がんばってみようか。」
ター君が言った。
今日からぼくたち4人もパタパタを90回がんばることにした。しかし、90回のパタパタは思っていたよりも大変だった。何とかがんばってぼくとモー君は70回やって、少しだけ上の方に浮くことができるようになった。でもサー君とター君は60回がやっとだった。ミー君はその後も一人でパタパタを90回続けていた。
ミー君が食べている雲は本当においしそうだった。それを見ていると今までおいしいと思っていた雲が何だかおいしくないように感じるようになってきた。
ぼくはみんなと
ぼくたちの
「今日も今からみんなで
ター君が声をかけた。
「1,2,3,4,5・・・」
みんなで声を出しながら、ぼくたちはそろってパタパタ、パタパタと
パタパタを終えるとモー君はみんなに言った。
「今日も大変だったね。」
「でも、これさえやっていれば安心して眠れる。」
サー君が答えた。
「じゃあ、みんなおやすみ。」
「おやすみ。また明日ね。」
みんなでおやすみのあいさつをした。
ぐっすり
ある日、ミー君が上の方の空をじっとながめていた。
「どうしたの、ミー君。上ばかり見て。」
「フー君、上の方の雲はどんな味がするのかな。いつも食べている雲よりもおいしいのかな。」
ぼくも上を見た。そう言われて見ると上の雲の方はおいしそうに見えた。
「おいしそうに見えるけど、どうやったら上にいけるのかな。」
「ぼく、昔聞いたことがあるんだ。パタパタの回数を増やすともっと高く浮くことできるんだって。」
「本当。でも大変じゃない。ぼくなんて30回でも
「大変だと思うけど、ぼく、やってみようと思うんだ。もしかしたら、もっとおいしい雲が食べられるかもしれないよ。今日から60回に
その日からミー君は一人だけパタパタを60回やることになった。
サー君は心配そうに声をかけた。
「ミー君、大丈夫かい。
「ありがとう、これくらい平気だよ。」
1日目は何も起きなかった。2日目も何も起こらなかった。しかし、それでもミー君は一人で、60回のパタパタを続けた。すると、3日目の朝になるとミー君の体はぼくたちの手が届かないところまで
「やった。ついに高いところに行けた。」
ミー君は喜んでさっそく高いところの雲を食べ始めた。
「おいしい。今まで食べていた雲とは違うよ。」
そう言いながらミー君は本当においしそうに雲を食べていた。
「やっぱり高いところの雲はおいしいよ。みんなも早くおいでよ。」
ミー君がぼくたちに向かって声をかけた。
「分かったよ。すぐに行くよ。」
ぼくは言った。
「よし、ぼくたちもがんばろう。」
モー君が言った。
「ぼくたちもおいしい雲を食べよう。」
サー君が言った。
「じゃあ、今日からぼくたちもパタパタを60回がんばろう。」
ター君が言った。
みんなも同じことを考えていた。今日からぼくたち4人もパタパタを60回がんばることにした。
1日目は何も起きなかった。2日目も何も起きなかった。でも3日目の朝、ぼくたちは浮いて、ミー君と同じ高さにまで上がった。
「わあい、やった。やった。」
みんなで
「やっぱり上の雲はおいしいね。」
ター君が言った。
「うん、毎日食べたいね。」
モー君が言った。
「ミー君、ありがとう。こんなおいしい雲が食べられるようになったのは君のおかげだよ。」
ぼくは言った。
「よし、今日から毎日、みんなでパタパタを60回がんばろう。」
サー君が言った。
パタパタが前よりも大変だったけど、おいしい雲を食べて、ぼくたちはまたみんなで仲良くのんびりと空に
そんなある日、またミー君は上の空を
「フー君、もっと上の雲はもっとおいしいのかな。」
「分からないけど、60回でもおいしいからきっと上の雲はもっとおいしいんじゃないのかな。」
ぼくは答えた。
するとミー君が言った。
「やっぱり、フー君もそう思うかい。ぼく、今度はパタパタを1日90回ずつがんばってみようと思うんだ。」
「ええ、ミー君、60回でも大変なのに90回も大丈夫なのかい。」
ぼくは
「うん。ぼくはもっとおいしい雲を食べたいんだ。だから
その日からミー君はパタパタを90回がんばった。1日目は何も起きなかった。2日目も何も起きなかった。でも3日目の朝にはまたぼくたちの手が届かないところまで上がった。
ミー君はさっそく雲を食べ始めた。
「おいしい。大変だったけど、がんばって良かった。」
ミー君は
「みんな本当においしいよ。みんなにも早く味わってほしいよ。だから、早くおいでよ。」
ミー君はぼくたちに向かって
「ミー君が食べている雲はおいしそうだな。」
サー君が言った。
「ぼくも上の方の雲を食べてみたいな。」
モー君が言った。
「じゃあ、ぼくたちもがんばってみようか。」
ぼくが言った。
「今日から90回がんばってみようか。」
ター君が言った。
今日からぼくたち4人もパタパタを90回がんばることにした。しかし、90回のパタパタは思っていたよりも大変だった。何とかがんばってぼくとモー君は70回やって、少しだけ上の方に浮くことができるようになった。でもサー君とター君は60回がやっとだった。ミー君はその後も一人でパタパタを90回続けていた。
ミー君が食べている雲は本当においしそうだった。それを見ていると今までおいしいと思っていた雲が何だかおいしくないように感じるようになってきた。