1
文字数 1,025文字
そう言って、お母様が取り出したのは、「ガーネットの姫」と言う本だった。絵本と言うには絵が少なく、小説と言うには絵の多いちょっと変わった本。
その本を、お母様は幼い私によく読み聞かせてくれていた。
幼いころの私は、難しい言葉なんて何も知らなくて、とにかく「ガーネットの姫」は神様から愛されて、特殊な力を持った存在、言うことしか分からなかった。そして、幼い私は「ガーネットの姫」に純粋に憧れていた。
いつも私はそうやって同じことを聞いていた。
子どもと言うのは不思議な存在。いつもいつも同じことを聞くし、好奇心が旺盛で、なんにでも興味を示す。特に私は人よりも好奇心が旺盛で、忘れっぽかった。だから、いつも「ガーネットの姫」になれる方法をお母様に尋ねていた。
そんな同じことを何度も尋ねる私に嫌な顔一つせず、お母様は答えてくれた。
そう駄々をこねる私の頭を、お母様は優しく撫でてくれた。あの感触は、今となっても忘れない。
そして、子どもと言うのはやっぱり不思議な存在で。少ししたら興味の対象もあっさりと変わる。「精神が美しい」と言うことに怒っていた幼い私は、すぐに怒りを忘れて、別のことに興味を持った。
本当に純粋だったと思う。私が、同年代の女の子たちがみんな憧れる『ガーネットの姫』。そんな存在に、お母様も昔はあこがれていたのだろうか。それが知りたくて、何も知らない私はそう尋ねた。