第1話

文字数 2,140文字

大谷翔平とオセロゲーム

大谷翔平のことが心配である
それは彼に関する報道のあり方が
あまりにも偏ったものになっているからである
今 大谷をめぐる報道は百パーセント
白で塗り固められているように思える
つまり 今 大谷のことを悪く報道することは
ご法度になっているようで どんな些細なことでも
大谷については好意的に報道され賞賛されている
しかし これは不健全なことで 当然ながら
大谷だって野球以外は普通の青年であり人間である
また 当然のことながら若くて世間知らずであろう
それが 神のように崇められているのが今の彼である
アメリカに住んでいる日本人にも熱狂的に支持され
日本人として誇りに思う こんな日本人はかつて
いなかったのではないかと持ち上げられる
つまり この大谷現象はひとつには今まで
アメリカ人に抱えてきた日本人コンプレックスの
裏返しであると言えると思う 容姿的にも
アメリカ人よりも背が高くてスタイルもよく
しかも ハンサムで とてつもなく明るい
これは確かに今までの日本人選手にはなかった
要素であり これは今までアメリカ人に対して日本人が
抱えていた劣等感を見事に吹っ飛ばしてくれるものだ
しかも 野球というアメリカの国技において大谷は
今まで誰もなし得なかった偉業を達成した
WBCでの大谷のずば抜けた活躍と日本の優勝に
日本中はまさに熱狂の坩堝と化した感があった
これは大谷が巻き起こした
新たな日本のナショナリズムの形である

しかし 我々はマスコミの「掌返し」の技を
これまでいやになるほど見せつけられてきた
彼らは持ち上げるだけ持ち上げておいて 
いきなり どん底に突き落とすことが大好きだ
今 大谷は持ち上げられるだけ持ち上げられている分
残酷に奈落の底に突き落とされるだろう
それは 彼にとんでもないゴシップが持ちあがった時であり
まったく打てなくなったり勝てなくなった時である
惨めな負け犬としての彼の姿があらわになった時
マスコミは今度はこぞって彼を叩きのめそうとするだろう
そして 手のひらを返したように今度は彼を黒で
塗り固めようとするだろう まさにオセロゲームのごとく
白がきれいに黒にひっくり返されてしまうのだ 
それはまさにマスコミ報道の法則の通りであり
彼らが利益を上げるための常套手段であるからだ
その時 大谷はどうなってしまうのか
その時こそ 我々は大谷というひとりの若者を
守らなければならない義務があるのではないか
アメリカ人は強者にはひれ伏すが弱者や負け犬は
大っ嫌いであり 今までの大谷への賞賛は
すぐにも ブーイングの嵐に変わってしまうだろう

大谷に現実には存在しようがない
夢のようなヒーローを勝手に夢見ている私たちは
そろそろ 神話ではない現実の物語を
彼の上に描いてやるべきときではないだろうか


ファンレターさまの紹介

光と影は背中合わせ

 白から黒。栄光の頂点からの奈落行き。マスコミの必殺手のひら返しをオセロゲームに例えた表現が秀逸だと思いました。大谷翔平選手は枚挙に暇がなく、非の打ち所がない英雄として持ち上げられていますね。日本人がアメリカに対して抱いているコンプレックスを跳ね返してくれる存在です。大谷翔平選手は本当に素晴らしい選手なので、これからもずっと応援して行きたいです。しかしどんなに素晴らしく優秀な人でも体力の衰えや歳には抗えず、退化してしまうのが世の常です。そして完璧な人間は存在しませんね。かつて大活躍したスポーツ選手もいつかは後に続く者達に追い付かれ抜かされてしまいます。そうなった時にマスコミは手のひら返しをするようにあら探しをはじめ、どんなことでも悪く書き立てるのです。そして私達も簡単に流され、批判し悪口を言う側へと寝返る。真実はよくわからないのに、ネットや週刊誌に誘導され自分の頭で考えようとしません。それはとても危険なことなのです。そのことに気が付かなくては、いつかは自分達もとんでもない手のひら返しを受け、身を滅ぼすことになるでしょう。光と影はいつも背中合わせ。いつ白から黒へと世の中がひっくり返るかわからない時代に生きているのですから…話が大きくなってしまいましたが、大谷翔平選手がオセロゲームの餌食にならないことを心から祈っています。

 作者より
「必殺手のひら返し」という言葉を最初に聴いたのはサッカー元日本代表の岡田監督からです。
南アフリカ大会の時だったと思います。大会前の彼の評判は散々で「やめろコール」が吹き荒れていました。しかし、いざ大会が始まって快進撃が続くとマスコミやファンは手のひらを返したように大絶賛を繰り返すようになったのでした。まぁ、勝負ごとですから分からないではないのですが、ガキっぽいというか、大人らしくないというか、もう少し余裕を持って楽しんではどうだろうと思います。負けるときはどうしたって負ける、これが勝負ではないでしょうか。
 今回のアジアカップでの森安ジャパンについても全く同様のことが起こっており、今まで大層持ち上げていた同じ人たちが、今度は打って変って森安解任論を打ち上げています。これは芥川龍之介の『杜子春』で富を手にした主人公が見せつけられた浮世の法則そのものと言えますが、大谷へのバッシングはいかに強烈なものになるのか、今から心配なのです。







ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み