蚯蚓。

文字数 441文字



 この炎天下、
 なにゆえ横断しようとしたのかアスファルトの道を。蚯蚓(みみず)よ。


 土手のサイクリングコースで、何匹も干からびていた。
 何かを目指したのか。
 あるいは何かから(のが)れようとしたのか。
 暑くてたまらず地上に飛び出したのか。
 地下の方が涼しくはないのか。


 せめて夜まで待てなかったのか。
 

 いままさに横断を始めようとするのもいた。
 丸々と(ふと)り、そしててらてらてと光っている。
 シューズのつま先で(くさむら)の方へと(はじ)いてやる。
 けれどまた横断を試みるのかもしれない。


 酷暑なり。
 平日でもここの土手は日中から人がいる。
 テントを張ってバーベキューをしている人がいたりする。
 けれど今日はさすがに見かけない。
 ロードバイク乗りたちはいつもどおりの無愛想で。
 橋の下のホームレスは今日も高々と足を組み、なにかの本を読んでいた。


 雑木林に()む白猫は不在で、
 烏が木陰で涼んでいた。 
 鳩が除草跡に群がっていた。




 蚯蚓は太陽に()かれて死んでいく。






 ☾☀闇生☆☽
 2023.07.10 『壁の言の葉』
 
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み