第1話

文字数 5,295文字

都市部からかなり離れている小さな町、明日町(あしたちょう)
平成の始まりの頃のような工場町や商店街が残るこの古臭い町の私立高校は、
六時間目の授業を終えて、放課後になっていた。
何かを待っているように机で座って頬杖をついている
くしゃくしゃの髪の毛の少し鋭めの目をした少年
薩摩秋人(サツマ アキヒト)は高校の2年になって
学校生活にもうなれて、常に退屈な日々を過ごしていた。
ふと視線を横に向けたら、窓際の友人が話しかけてきた。
「秋人、死体の話って知ってるか?。」友人は続けてこう言った。
「この校舎内に二十年前に行方不明になった生徒の死体が、まだあるって話。」それを聞いて
秋人はふんっと鼻で笑った、
「バカかお前は、それは旧校舎の話で、今は取り壊しているだろ」
「いやいやこの話は根拠があるんだよ、実はこの校舎はな…」
どうせ続けても子供の嘘のような話になるけど、一応友人なので少し付き合おうとしたが、
教室のドアがバン!っと開き先生の怒鳴り声が飛んだ。
「おい‼︎いつまで残っている⁉︎、もう放課後だぞ‼︎」
「あ!ヤベェ‼︎そんじゃ秋人、またな。」午後の授業が終わって、しばらく経ったのだろうか、窓はオレンジに染まっていた。
門限は超えてないけど、暗くなる道はめんどくさいから、早く帰ろうとしたが
カシャっとスマホのシャッター音が左耳から聞こえた、その方向を振り向くと眼鏡をかけた癖毛のある女の子が一人立っていた、彼女は日向 夏奈 (ヒムカイ カナ)同じクラスの同級生でひたむきに明るいのが特徴の女の子だ。
「アッキー、タイミング悪いよー、珍しい鳥が木に止まってたのにぃ」カナが話しかけてきた
「カナ、お前もまだ残ってたんだな」
「あのね、ハルちゃん見なかった?、午後あたりから見なくなったの」
あの場所だろうと感覚でわかったので
「屋上にいるぞ、うちの学校は屋上立ち入り禁止というのは知ってるだろう。
しかしそんなのお構いなしに屋上へ行くハルは、
俺たちも知らない解散したバンドの曲を聴いて寝転がっているだろうな」と言ってそのまま学校を出た
しばらく校門の前で待ってたら二人が来た、
カナより背が高くてショートヘアの彼女、その子桜井 春子(サクライ ハルコ)である。
「おう、アキ、お前待ってたんだ」相変わらず愛想のないやつと思いつつも、
帰り道はほとんど一緒だったので、
三人してこの田舎の住宅街を歩いて帰った、最近建てられた民家はないし、何よりほとんどが
木と瓦屋根の家ばかりだ、そんな古臭い町を歩いているときに、ふとこんな事を言った。
「カナ、ハル、そういやもうお前らが引っ越してきて一年経ったよな」
「うん、今じゃ幼馴染みたいに仲良しだよね」とにっこりカナは笑ったその横にいる春子は
少し前へ歩き出した、
「うーん、でもそんなことよりも世界って退屈だねと最近思うけど」
といつも通りちんぷんかんぷんな事を呟いた、ハルは一年からずっとこんな感じなんだ、
そんな言葉に秋人は少し呆れたような顔をして
「何言ってんだよ」と言った。
「うん、あたし何言ってんだろうね。」と本人も何も考えておらず、
その事に横のカナが苦笑いしてた、
その次の朝、秋人は、眠いのを我慢して布団から
ゆっくり起きて、着替えをしながら机の横の窓を開けて、自分を待っている
ハルとカナの姿を見てから、カバンに必要な本を入れてパンを食べた後、
玄関を開けてハルとカナに「おっす」と軽い挨拶をしたら、カナは「おはよう」と元気よく、
ハルは「うーす」と
同じく軽い挨拶をした、その後は三人でいつもの学校へ向かって歩き出した
登校していたが途中カナが
「ねえアッキー」と声をかけてきた、
「ん?なんだ。」
「死体の話って知ってる?、なんかクラス内で噂になっているんだ、明日高校の校舎内に死体があるって。」
二度目のその馬鹿話を聞き、はあーっと、ため息をついてだるそうに言った
「…昨日も同じことを言ってた奴がいたが、
それはボロくなって取り壊した旧校舎の時の話だろ。」
「え?信じないの?、面白そうなのに、」
「当たり前だろ、そんなのどうせ、どっかのバカがばら撒いたデマに決まっているだろ。」
とそんな噂話を蹴り飛ばしたら、カナはうーんと困ったような表情をして首を傾けていた。
それ以降は大した言葉を交わさず学校へ向かった。
教室に着いた時にカバンを後ろのロッカーに入れて、
自分の机で授業の時間を待っていた、すると奥の方から誰かが来た。
自分の視線に背の高いハクがやって来て「秋人!」と声をかけてきた。
「ハクか、なんかようか?」
「何も、ただ朝の挨拶だよ」
「そんな必要はねえよ」とそっけなく言葉を返すとふと、あのくだらない話の事を思い出して、答えはわかっているけど彼に話した
「おいハク、死体の話って知っているか?。」
「なんだその幼稚な話は?」
「だろ、本当にくだらない話だろ」とはははっと少し俺は笑った
「最近ウチの学校で噂になってるらしい」続けてハクが、無表情に語り出した、そもそも死体がどういうものか、あーだこーだ頭が痛くなるような事を語り始めて、
「あーわかったからいいよ」とこれ以上の語りを止めた、すると横の女子二人が何やらヒソヒソと話ているのを聞いた、その二人とは別に春子とカナが二人で話していた、そちらに聞こえない
距離で女子たちが話していた
「あのこ、またあの子とと話しているよ」
「ほんと、あの二人できているのじゃないの?、」とくすくす笑いながら
軽蔑を混ぜた目で二人を見てた
「?、何の事を言っているんだ?…」と顔をしかめてみてたら、横からハクが声をかけ
「秋人、僕はそろそろ席に戻るよ」
「お…おう」とハクは戻って行った、それからあくびが出るほどの退屈な授業を受けた、本当にあくびをしたら先生に注意されたけど、そして放課後で下駄箱に上靴を入れて下履に履き替える途中、ハルが来た
「おう、アキ、一緒に帰るか。」少し黄色みのかかった夕暮れの町を二人で話しながら歩いた
「そうか、カナは学校の用事で直ぐに帰れないと」
「まあ、たまにはいいんじゃない?二人で帰るのも」とサバサバした振る舞いをした、帰り道を半分まで歩き切ったところで、ハルに尋ねた。
「おいハル、」
「うん?」
「お前さ、学校でどう思われているか気にしたことあるか?
「うーん。考えたことはないなー、」と返してきた、
本人が気にしていないとは言え俺はすごく気になっていた
あの女子たちが言ってた言葉は誰に向けて言ったか、いやどちらにしろ友人としては
気持ちがいいものでは…っ考え事に夢中になりすぎて、秋人は壁に頭をぶつけてその場にうずくまった。ハルは心配してるような感じはしてなかったが
「おうどうした?、考え事をしてて前がみえなかったか?。それとも何か、
今流行りの“死体の噂”の事を考えていたのか?」
『ち…ちげーし‼︎」と怒鳴ったが彼女は嘲笑うかのように答えた
「くだらないー」少し笑みを浮かべてたので、俺はかなりイラっとしたが
ふんっと歩き始めた、自宅に着くと一言「またね」と言って、ハルは手も振らずスッと帰っていった、、秋人は玄関で靴を脱いで鞄を置き、両親のいるリビングで二人にただいまと言った、
奥で夕食を作るお袋に、風呂に入れと言われてすぐに湯船に浸かりに行った、学校生活は退屈でその分終わった後に物思いに耽ることが多い(これは秋人自身の考え)
風呂に浸かって今日の出来事を考えるのは小学校に出てからの習慣になっていた、
そして今日は思うことはあの事とは別のことだった、同じクラスの“桜井春子”の事だった。
春子は高校入学の時に関西からやってきた、その時からあの変人っぷりはあった、
最初は抵抗はあったけど一年すればもう慣れっこだ、そして最近思うことは時々むかつくし
本当に変なやつだと思っている、けど、なぜか嫌いになれない。
むしろ嫌いになりたくない気持ちがある、これ以上考えても無駄な長風呂をするだけなので
今日は食事をしてそのまま寝た。死体話がクラスに広まって三日くらいたった午前の中休みに、
外へ出て飲み物を買おうと春子は財布をポケットから取り出した所、
チャリチャリっと小銭が落ちて、そのまま自販機の下へと転がっていった。
ハルは両手と右頬を地面につけて、隙間を必死?に小銭を探したが
やる気ない声で「奥に言ったか、残念」と言って立ち上がった。
「大体小銭って言ったって一円くらいどうって事ないだろ。」というと横のカナが
「いやいや一円でもお金だし粗末に扱っちゃだめだよ」と小言を言った。するとカナの後ろから同級生の女の子がばっと抱きつくように腕を回してきた、
「カナっち!何やってんの?。」と明るく話しかけてきた、
カナは頬を赤らめて回してた腕を払った
「ゴメン、トイレに行ってくる」カナは早足で校舎に入っていった
「カナって女の子に触られるの嫌みたい」と横からハルが話しかけてきた、
「え?そうなのか?、そんな事は本人は言ってなかったぞ。」
「これ、あたしにしか話していないんだよね」と言ってカナのとこへハルは早足で向かった、
後から秋人も向かった。校舎の玄関を入って近くのトイレにいるだろうと思って
校舎の隅っこの薄暗いところのトイレに二人はいた。その近くで何やら話している。
「おう二人とも何話していたるんだ」とちょいっと言ったら、カナは明日世界が終わるような
驚いた顔をして
「アッキー…図書室行こう…すごい事を知っちゃったよ」
へ?っという疑問の次に尋ねるまもなく、三人は図書室へゆき、この学校の歴史についての本をまとめて読んだ。旧校舎の成り立ちは元々、当時に流行っていた流行病の患者を隔離するための病院だった事、そしてその大量にいる患者を隔離するべく、病院の下に地下室を作った。
その事実を読んでカナは言った。
「もしかしたら死体ってその地下室にあるって事だよ」
「な!」っと大声が出そうだったが、周りにも利用者がいたので出そうになった声を
グッと抑えて静かにカナに言った
「…あんな、地下室はまだわかるけど…、けどさそこに死体があるっていうのは、
まだ信じられねえよ」
「いやいや、もう本当でいいんじゃない?、あたしそう思えてきたよ」
それでなおも頑なにこの馬鹿話を本気で信じようとするカナは横にいるハルに
「ハルちゃんはどう思う」と尋ねた、視線を天井にやって机にもたれかかりながら、
「うーん、この事はあたしが持ってきたんだけどね、うーん…なんというかねー」
はっきりしない振る舞いをする春子に少しイラッとしたので
「なんだよ…はっきり言えよ…。」というと、春子は下へ指をさしてこう言った
「地下室へさ、どうやっていくの?。」それには同感だった例え地下室があって
死体もあっても、行く方法がないのだから。
ウキウキしてたカナは少し目線を下にやって図書室を出た
俺たちも後から出てカナに言ってやった
「もういいだろ、地下室があるっていうくらいで」
しかしカナは下にやった目線をばっとあげて
「いや!、あたしは諦めないよ‼︎」とすぐに覇気を取り戻して「たとえ手で掘ってでもね」
「モグラかよ…」と俺は少々呆れた、ふとハルに目をやると、彼女は当たりをキョロキョロと見回していた。
「?、おい春子どうしたそんなに当たりをみまわして」こっちへ目線を合わせず何もない廊下の角に目をやりながらハルはこう言った
「なんかね…誰か呼んでる気がしたんだ…」
しかし彼女の目線の先には何もいなかった、どれだけ目を凝らしていても、
何もないものは何もない、
「…まあいいや、行こうよ」と秋人とカナの背中を押して教室へ戻った、それからは理科やら社会とかの暗記すればいいような事の授業を受けた、
どうでもいい授業なので、聞くふりをしながら地下室の事を考えていた。
「今頃その地下室はどうなってるのだろう…、まあ今はコンクリでも流して固めているだろう
そうじゃなきゃな…」
とすると先生の怒鳴り声が耳に飛んできた。
「秋人‼︎ちゃんと聞いてたか⁉︎、この元素記号はなんだ⁉︎」
「あ…えーとH(エッチ)だから…水素?」
すると先生はフーっとため息をついて
「正解だ…しかしまぐれ正解だから大目には見ないぞ…それに“エイチ”を“エッチ”と呼ぶのは
どうかと思うぞ」その時に教室内が笑いに包まれた。
カナも釣られて笑っていたが、ハルはクスりとも笑っておらず何かを考えているように天井を
見ていた。そんな恥をかいた午前の授業を終えてからは昼の弁当を食堂で食べて、
そして午前の延長線の午後の授業を終えた、
放課後の蹴り道に今日の地下室の話(カナが一方的に話して)をした。
「どっかに入れる穴とかないかなー?、たとえば排水溝につながっているとか」
「仮にそうであっても、入ったら二度と戻って来れなくなるぞ」
と釘を刺すような言葉を刺した、横にいるハルにも「なあ」っと呼びかけたが、イヤホンをしてて聞いてない様子だった。
「ん?なんか言ったか?」と平然と聞いてないそぶりの言い方をしたので。
「あーもう、なんでもないよ」と答えたら、再び耳にイヤホンをつけて、自分たちの知らない
バンドの曲に耳を傾けた、そのまま転んでもこっちは知らねえけど。
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