第1話

文字数 878文字

 日本で有数の米どころ、ここ(山形県)庄内の朝は早い。
 ナイター施設や屋内の田んぼはないので、米作りは日の出とともに始まり日没で終わる。日の出が早い6月頃は、朝4時過ぎには農道に農作業用の軽トラックを見かける。
 地元の温泉の朝風呂は6時からで、その15分前には常連たちが集まる。
 病院の入院患者さんの病状面談などで、日中は仕事で多忙な家族も朝7時からの面談には都合がつくことが多い。
 私は庄内町の特定健診を手伝っている。特定健診は、全国の市町村が40~74歳の人を対象に行う健康診断で、主に生活習慣病に着目し、その検査項目も充実している。
 健診会場となるのは、地域の公民館だ。そこで朝8時から内科の診察を分担して行っている。8時には、すでに多い時で約100人の町民が集まっている。受け付けは7時半からで、早い人たちは6時半頃から待っているらしい。お役所仕事は9時からではないのだ。凄いと思う。
 そして、農作業のない冬も朝は早い。朝の4時には、町内の主だった通りを除雪車が走る。5時過ぎからは、家族が家の前の雪除(ゆきの)けを始める。地元には降雪期の除雪を収入源としている企業も多い。ある雪の日、病院の夕診に血圧が 190/100 mmHg と高い患者さんが受診した。彼は朝の2時から先ほどまでず~っと除雪車を運転していたそうだ。
 2024年から「働き方改革」で医師、自動車運転業務、建設業などの労働時間の上限が決められる。就業規則、労働時間、超過勤務、タイムカード、すべて人が決めた机上の規則だ。一方、庄内の人たちは自然とともに生きているので、その生活や仕事振りは四季折々の自然に合わせて自然に決まる。これが本来の人間らしい生活だと思う。
 さて写真は、2021年5月15日に撮影した、第2最上川橋梁を渡った羽越本線下りの朝日を浴びた貨物列車だ。

 この頃は日毎に日の出が早くなり、余目(あまるめ)駅を 4:37 と 4:49 に通過する2本の下り貨物列車が撮れる。
 そこに何と、自分だけではなくもう一人、撮り鉄がいたのには驚いた。
 皆、早起きだ!

 んだんだ!
(2021年11月)

 
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