第1話

文字数 1,171文字

 焼酎は酒税法上、「甲類」と「乙類」の2つに分類される。
 その甲類焼酎は、連続式蒸留機を用いて蒸留したアルコール度35度未満の焼酎である。連続式蒸留機は蒸留を何度も繰り返すタイプの蒸留機なので、純度の高いアルコールが得られ、甲類焼酎は無色透明の癖のないスッキリとした味わいを特徴とする*。(*www.sappporobeer.jp>support>customer>faq を参考にした)
 要はすっきりとして癖がないので、酎ハイやサワー、お湯割りなどいろいろな飲み方でたくさん飲めるのだ。
 山形県庄内で生まれ、育まれた郷土の焼酎「(さわやか)」もその名の通り「飲み口爽やか」な甲類焼酎である。

 あ~でもない、こ~でもない、()()然々(しかじか)
 「俺、『爽』のアイスコーヒー割りなら飲んだことあるけど。」
 「アイスコーヒーで割ると、ただでさえ薄い感じの『爽』が余計に水っぽくなるよ。」
 ある晩、よく行く街のスナックのカウンターで、気風(きっぷ)のいいママさんと常連たちとで、「『爽』の飲み方」談議に花が咲いた。
 「え~~っ!? 焼酎にコーヒーねぇ…。合うのかねぇ…。」
 皆、コーヒーと焼酎の組み合わせに懐疑的であった。
 「美味しいコーヒー焼酎の作り方は簡単だよ。『爽』のボトルに()ったコーヒー豆をそのまま何粒か入れておくだけでできるよ。」
とは、ママさんの言葉だった。
 「ただし、1週間くらい時間がかかっけど。」「誰かのボトルで造ってみっか?」
という経過で、私の「爽」のボトルにコーヒー豆が入れられた。入れる豆の量はホント、適当だった。

 それから約1か月後、思い出したようにスナックに出掛けた。
 「何飲む?」
 「『爽』」
 「あっ! コーヒー豆入れた奴、飲む?」
 「んだ。できたか?」
 「んだ。できたが、あんまり美味しくねぇの。」
 「…?」
 出てきた私の「爽」のボトルの中身はこげ茶色に染まり、何故かボトルの半分近くまで量が減っていた。皆で味見をしたらしい。
 グラスに氷を一杯入れ、焼酎を注ぐ。(写真↓)

 思ったより色は薄い。(かす)かにコーヒーの香りがする。口に含んだ。コーヒー豆の渋みが口の中に広がった。飲み込むと後にコーヒーの苦みが残った。
 「おぉ、美味しいよ、これ。コーヒーの強烈な苦味があって、大人の味だな。」

 コーヒーの風味はコーヒー豆の油分に多く含まれる。
 コーヒー豆を常温の水で(ひた)してゆっくりと抽出する水出しコーヒーは、お湯で抽出するのとは違ってコーヒー豆の油分をあまり含まない。だから癖が少なくマイルドな味わいに仕上がる。
 一方、甲類焼酎でコーヒー豆を抽出すると、アルコールがコーヒー豆の油分を一緒に抽出するので、コーヒー豆の特性をより強く感じさせるのだろう。
 以上を考察し、私はこの飲み方を
 「甲類焼酎出し珈琲(コーヒー)
と名付けた。

 んだんだ。
 (2024年1月)
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