第4話 【書評】三井寺に眠るフェノロサとビゲロウの物語(2023.8.9記)

文字数 809文字

【ホンワカした本だが、そこがイイ】

1.書名・著者名等

山口靜一 (著)
『三井寺に眠るフェノロサとビゲロウの物語』
出版社 ‏ : ‎ 宮帯出版社
発売日 ‏ : ‎ 2012/5/25
単行本 ‏ : ‎ 208ページ

2.兎平亀作の意見です

著者は美術史家で、埼玉大学名誉教授。
フェノロサに関しては研究書も訳書もある。
そもそも1986年から1994年の間、日本フェノロサ学会の会長を勤めたと言うのだから、押しも押されぬお立場である。

だが本書、「大学の先生が書いたお堅い本」と言う感じではない。
すごく読みやすい。そして、どこかホンワカした雰囲気を備えているのだ。
この感じ、何かに似ている。

そうだ。ファン本だ。
『ファン1,000人が熱く語った村上春樹』とか、『機動戦士カンダムはオレたちの青春だった』とか、『手塚治虫先生、どうもありがとう』と言ったタグイの企画モノである。
「ひいきの引き倒し上等」で、あれこれ書評するだけヤボと言ったタグイの本と、なんだか似ている。

本書『三井寺に眠るフェノロサとビゲロウの物語』にも、「ちょっと踏み込み過ぎじゃないか」と思わざるを得ないような、脇の甘い記述が、そこかしこにある。
だが、そんな事はモンダイではない。
科研費もらって書いた論文とはワケが違うのだ。

本書では、漢文で書かれた碑文には読み下し文が添えられ、英文の碑文には、わざわざ訳文が添えられている。
大学の先生は、普通、読者にここまでサービスしないものだが、ファン本だから、これで良いのだ。

本書は、ホンワカした「フェノロサ愛」にスッポリ包まれている。
「I loveフェノロサ」本なのだ。それで十分ではないか。

フェノロサは日本を愛した人だった。
その愛ゆえに、身辺に「日本ラブ」サークルが自然と出来てしまうような人だった。
本書を読んだ事で、私も「フェノロサ公認ファンクラブ日本支部」に加入した気がする。

こういう本は、いつ読んでもキモチの良いものだ。
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