第2話 【書評】ドイツ歴史学者の天皇国家観(2023.6.22記)

文字数 952文字

【ユーはナニしにニッポンへ?】

1.書名・著者名等

ルートヴィッヒ・リース (著) 原潔・永岡敦 (翻訳)
『ドイツ歴史学者の天皇国家観』(講談社学術文庫)
出版社 ‏ : ‎ 講談社
発売日 ‏ : ‎ 2015/7/10
本の長さ ‏ : ‎ 170ページ

2.兎平亀作の意見です

「この人の立場からすれば、当然、こういう言い方になるだろうナァ」と言う話ばっかで、こっちの胸にグサッと刺さって来るような、本質的な指摘は一つも無かった。ガッカリである。

『ベルツの日記』と言う本がある。
東大医学部で27年間、教鞭を執ったエルヴィン・フォン・ベルツ先生のプライベートな文書(日記・手紙)を編集したものである。

『ベルツの日記』が面白いのは、「日本人を観察している自分自身」をも観察対象に含めているからだ。「日本人を鏡にした自己批評」と言い替えても良い。

片やルートヴィッヒ・リース先生の日本論に、自己省察的な要素はない。
日本に関する基本情報の収集と、その評価に全力を傾けている、と言った印象を受ける。

ものすごい日本ツウではある。
面白そうだと見れば、博覧会でもどこへでも出掛けて行く。

「柔術の第一原理は、相手の攻撃の動作に対し適当な瞬間に不意に軽く妨害を加え、それによって相手を相手自身の力のモーメントで倒すという点にある。」(本書、p156)

と言ったような実践的な柔術論が、3ページに渡って開陳されているのには驚いた。情報源は嘉納治五郎だろうか。

ただの日本マニアでもない。
政治経済、学術文化、風俗習慣と、日本社会の基本情報を満遍なくカバーしている。まるでジェトロの海外レポートである。

リース先生が日本語に堪能だったのかどうかは、本書からは分からなかったが、仮に自分一人で古文書をスラスラ読めるレベルだったとしても、滞日15年で、これだけの情報を集めるのは並々な事ではない。

東大史学科の教え子たちを調査に動員したんだろうか?
仮にそうだとすると、かなりの人たらしである。フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトみたいな。

リース先生、滞日15年。
ただの出張授業にしては長過ぎる。
かと言って、リース先生が沢庵ポリポリかじりながら、お茶づけ食べてる姿も想像できない。
「日本にメロメロ」と言う感じでもないのだ。

ユーはナニしにニッポンへ?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み