第4話 クマノミ君

文字数 586文字

クマノミ君
 
 クマノミ君は、小さな弱々しい男である。しかしながら、彼には特技がある。ITだ。

 現代は、パソコンの時代である。そのトラブルも多い。従って、それを即座に解決できるクマノミ君は職場で重宝される存在である。

 彼はそのように存在理由がある男なのであるが、小男ゆえに巨漢に絡まれやすく虐められ易い。
 
 人間社会も河や海の中のように大魚が小魚を捕食する、弱肉強食の現象が見られるのである。

 こう言った場合、稀有な才能でも潰されがちなのであるが、クマノミ君はどっこい生きている。

 彼には、強い味方「イソギンチャクの局」がついているのだ。

 局は、これといって才能がある女ではないが、漢のキンタマを握ることについては才能がある。ことに責任者のそれを握ることにおいてはプロである。

 彼女は、魅力的な風貌をしているわけではないが、柔道の有段者であり、趣味で女相撲をしている偉丈夫だ。

 丁度クマノミ君と凹凸になっており、仲が大変に良い。局がITに疎く、クマノミ君が腕力において乏しいからである。

 最初、職場の連中は二人を恋仲ではないかと疑っていたが、最近では「共生」と見做し変に納得するようにしているようだ。

 時折、他部署のウツボ野郎が、クマノミ君を狙いにくるが、その度に局が「帰れ!」と恫喝すると奴はすごすごと引き下がるのである。

 正に、殿を警護する剣客の如しである。

 
 
 

 
 
 
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