チュパカブラ

文字数 963文字

 私がホームステイ先に選んだのは軍人の家で、任務がない時は猟犬の世話をしています。

「…やられた。どうやら、この辺にも出没してるようだ。英美里、気を付けろ」

 家主のブラッドさんが私に、犬の死体を抱えながら言います。

「どういう意味です?」
「見ろよこの犬」

 犬は、死んでいるというより寝ているように見えました。体には外傷が全く…いいえ、首の辺りに小さな穴が二つ開いてました。

「チュパカブラだ。ヤツが襲うのはヤギだけだと思ったが、俺の犬にも手を出すとは…」

 私とブラッドさんは庭に墓を建て、犬の死体を埋葬しました。

 そしてその夜のことでした。私が何気なく犬小屋に目をやると、変な動物の様な何かが入って行くのが見えました。
 これはマズい! 私はそう思って犬小屋に向かいました。私が駆け付けた時にはまだ被害は出ていませんでしたが、私の後ろから、不気味に喉を鳴らす音が聞こえました。

「え?」

 振り向いたと同時に、声が出ました。私の後ろにいたのは、大きな目に牙を二つ生やした、二足歩行をする謎の生物。
 その大きな目で私を睨むと、まるで獲物を決めたかのように私との距離を縮めていきます。

「きゃあ!」

 私は尻餅をついてしまいました。それを見るとその生物は、今がチャンスと言わんばかりに一気に接近してきます。
 銃声が鳴りました。驚いたその生物は、犬小屋から抜け出し、逃げて行きました。

「大丈夫か、英美里!」

 ブラッドさんが助けてくれました。幸いにも私は、無事でした。そしてその生物は、二度と出現しませんでした。


 チュパカブラは、UMAと言った方が早いでしょうか。ネッシーやビッグフットと同じ類ですね。
 チュパカブラは、スペイン語で「ヤギの血を吸う者」という意味です。英語では直訳して「ゴートサッカー」って言うらしいです。
 二十年程前にプエルトリコで出現して以来、アメリカにまで目撃者が現れました。家畜だけでなく、私の時のように人間を襲うことがあるようです。
 その正体は、皮膚病で毛が抜け落ちたコヨーテじゃないかと推測されます。

 ちなみにUMAとは未確認動物の省略ですが日本人の造語…いわゆる和製英語なので、海を渡ると通じません。それを知らなくて恥をかいたのが、私ですよ…。
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