第3話、ワープが完成した!

文字数 1,108文字

魚太郎はそっと機械から手を放した。手は感動で震えている。

「完成だ……完成だ!!」

おおきな声で魚太郎は完成を高らかに宣言した。魚たちは、そんなことには興味もなく、むしろ怖いから近寄らないようにしていた。誰に何を言われようと、どんなに嫌われようと、魚らしくないと悪口を言われようと、魚太郎は映像のお姫様のことだけを考えて、機械をいじり、そして、ワープを完成させた。

魚太郎は天才だった!

ういんういんういん

機械は謎の音を立てて、光を発した。
深海の暗い場所に、円の形の光が現れて、そこに魚太郎は立った。
ライトアップされている状態である。
魚太郎は決めポーズを決めた。

「ワーーーーーーーーーープ!!」

ぱああああああああああ

深海が光に包まれた。魚たちは岩陰に素早く隠れた。数匹の魚が、隠れそこなって、あまりの光に気絶して、次の日、海の表面にたくさんの深海魚が浮かんでいたらしい。これは、海鳥からのえさ場連携情報からも確かだった。

深海には壊れて動かない機械だけがあった。

魚太郎の姿は消えてしまっていた。

☆☆☆

ワレ ワレハはガタンゴトンと揺られていた。本来であれば、もっと快適な乗り物で行くはずなのに、今日はゆれにゆれる乗り物だった。浮いていないし、右に左に、WW星は基本的に移動は浮いた乗り物にのって移動するので、道はあまり整備されていたので、浮かないとひどく揺れるのだ。しかし、ワレ ワレハはどうにか、気分が優れないのを出さないように、大丈夫ですという顔をしていた。

ういーんういーん

急に大きな警報がなると、警備隊が騒ぎ出した。

「この新しい時代に、王政は時代遅れだ!!」

若く手足の長い、民間の人たちが皇女様一行を襲ったのだ。ワレ ワレハはその様子を見ようとした。

とん

どうしてかはわからなかった。けれど、いろんなことがワレハにはわかった。浮いた乗り物が今日は用意されなかったのは、わざとだったのだ。乗物からワレハは放りだされた。手も足も短いワレハは、頭をぶつけてしまう。落下に弱いのだ。頭が大きいから、確実に頭から落ちてしまう。それは、誰もが想像していて、わかっていたことだった。

そして、民間の若者たちのせいにされるのかもしれない。もしかしたら、この言葉に心を痛めたワレハが自ら落ちたということになるのかもしれない。そんなことをワレハは一瞬の間に考えてしまった。ぶつかると思った。その瞬間。

がしっ

力強い腕の中にワレハはいた。

そこには、大きな頭の魚人、魚太郎がいた。

「あぶねぇ、大丈夫か!!」
「あ、は、はい……」

とぅんく

ワレハは恋に落ちた。

「魚人、魚太郎!! あんたに会いに来た!!」
「とぅんく……」

すき……。

ワレハの目はハートになった。

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