第4話、二人の短い幸せ

文字数 1,094文字

魚太郎がワーブして降り立つと、お姫様が降ってきた。大きな頭は賢そうで、大きな瞳はとても美しかった。魚太郎の胸は、ばくんばくんと大きく音を立てた。

深海で生きて来た魚太郎は、宇宙に急にやってきて、体が悲鳴を上げた。そして、次の瞬間。

「無敵!!」

順応した。宇宙でもえら呼吸がいけてしまったのだった。むしろ、深海よりもかなり肌にあっていた。お姫様を受け止めると、ゆっくりとおろした。

「無礼者!」
「姫様を守れ!」

魚太郎は意味がよくわからなかったが、姫様の瞳がうつくしかったから、魚太郎はうなずいた。はじめの一人が剣をふってきた。手の長い、しゅるりとした剣士だった。その剣を白刃取りすると受け流し、奪った。

「な、何を」
「おまえら、この人がケガしたらどうする!!」
「しゅてき!」

ワレハは言語力を失っていた。恋とはそのようなものなのである。

「危ないから、少しだけ下がっててくれ」
「はい♡」

ワレハの語尾にはすでにハートがついていた。フォーリンラブであった。

「必殺、うろこ桜!!」

急に魚太郎は必殺技を繰り出した。剣の先で、自分のうろこを削り、複数に対応したのだ。この惑星に置いて、うろこの素材は非常に有効で、騎士たちは「いて」「痛い」とその場に座り込んだ。

「魚太郎様!」

ワレハは魚太郎に抱き着いた。

☆☆☆

ワレハはうっとりと、魚太郎を眺めた。魚太郎もワレハを見つめる。ワレハの証言によって、乗り物に同乗していた第一騎士団長が犯人であることが明らかになった。ワレハは今回助けてくれた魚太郎をたたえて宮殿に招いた。

魚太郎は美味しいご飯をたんまりと食べた。魚人である魚太郎は食事も宇宙食に順応した! 順応力が高かった。

ワレハはしかし、心配になった。うつむいて、食べる手を止めた。

「どうした、怖かったのか?」
「魚太郎様……はい、私は怖いのです。私のような醜い者が、魚太郎様を好きになってしまうなんて……」
「何を言っているんだ」
「すみません、いつもは言わないように気をつけているけれど、魚太郎様の前では、どうしてこんなことを言ってしまうのか」
「あんたは、美しい。大きな頭はとても賢そうだし、大きな瞳はとてもきれいだ」
「魚太郎様」

とぅんく

「結婚したい」

ワレハは本音が口から出た。

「好きです、魚太郎様」
「俺もだ!!」

しかし、運命は無情だった。二人が両想いになったその瞬間、ワープの時間制限になってしまったのだ。なんということだ。まさか、ワープに時間制限があったなんて。突発的に成功したワープは、突発的に、深海に魚太郎を戻す仕組みなってしまっていたのだ。

ひゅん

「魚太郎様~~!!」

ワレハの前から魚太郎は消えてしまったのだった。

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