はたけ

文字数 426文字

 孫と畑へ西瓜を収穫に行った時のこと。

「ゆきちゃん知ってるか、美味いスイカは叩いたらわかるんだぞ」
「ぽんぽん」
「そうだ、でもあんまり強くしたら駄目だ」

 さてどれにするかと吟味していると、孫がある場所から動かない事に気付いた。

「それがいいのか?」
「すいか、おへんじした」
「は?」

 紅葉のような手が西瓜を叩く。
 ぽんぽん、コンコン。
 入ってますよと言わんばかりに、内側から分厚い皮を叩く音がした。

「このすいか、たべたい」
「あー……」

 少し迷った。自分が毒見するとしても、現在幼い孫によくわからない物を食べさせて良いものか。

「……まだ食べられないよって言ってるんだ」

 小振りであるのを理由に、諦めさせた。その日以降、返事をする西瓜を手に取る事はなかった。泥棒に盗まれてしまったからだ。
 しかし変死体や奇妙な病状を訴えるニュースはついぞ出て来なかったので、無害なものだったのだろう。味見し損ねた事を少し後悔した。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み