第3話

文字数 2,971文字

 〈ついに来た! マグマのようなエネルギー⭐〉

 わたしのパワースポットである神社に無性に行きたくなった。
 一ヶ月ほど前からご無沙汰している。
 「来い!」と呼ばれている気もした。
 せっかくだから、ご神体である山にも登ろう。今日は頂上を目指すのではなく、半分まで行って、楽しんで帰ってこよう。そう思った。

 十分ほど山を登ったところで、急に涙が止まらなくなった。
 こんなことは珍しい。

「わたし、ずっと辛かった。あんなふうに言われたり、自分でもそう思ったりしていて……」
 心の奥深い部分から、もう一人の自分が訴える。
 それは、罪悪感を引きずっていた過去の自分だった。
 わたしはその自分と対話をし、なぐさめ、肯定してあげた。
 わたしと同じような思いをしているであろう誰かの心も一緒に――。
 涙は流れ続ける。

 カラスが、カアカアと鳴いていた。
〈さぁ、もう涙をふいて、登っておいでよ〉そんなふうに聞こえた。

 何事もなかったかのように、また足をすすめる。
 いつも休憩する岩場に着いて腰を下ろしたとき、
「そうだ、久しぶりに、裸足になろう」と思いつく。
 以前、鍼の先生にすすめてもらってから、開放感が心地よく、やみつきになっていたこと。
 今年になってからは、靴を脱ぐのが面倒だったので、全くやっていなかった。
 この日の岩は、ほっこりと温かく、体重を乗せると足裏が痛かったけれど、やっぱり開放感で満たされ、より童心に近づけた。
 ひとしきり自然を堪能して山を下り、神社にもお参りをして、一ヶ月のご無沙汰をいろいろと報告。
 汗をいっぱいかき、心身ともにスッキリして家路についた。

 よくあることなのだが、この神社にお参りしたあとは、なにかしら、いいことがある。
 ぴったりの表現を思いつくとか、アイデアがひらめくとか。
 でも、今回は違った。パワーがすごいのだ。

 この日の夕方から、シンクロニシティといわれる偶然が次々と重なる。
 パソコンを開いて、占星術師keikoさんの記事を読んで驚く。わたしがしていた塩浴の意味を教えてくれる内容が載っていたから。
 そして同じく、keikoさんの記事から、もう一つ驚いたことがある。
 6月20日がペパーミントの日、ハッカの日だと知った。

 何日も前から気になっていて、やっと買ったハッカ油がある。部屋のいろんな場所において香りを楽しんだり、マスクにスプレーしたりしていた。
 そのハッカ油を買った日が、ちょうど、ハッカの日だと知ったのだ。
 うれしい偶然だった。
 Twitterを開いても、ビンビン響くメッセージが入ってくる。

 夜、湯船につかっているときも、いろんなヒラメキが湧いてきて、携帯にアウトプットした。
 それは夜中にも引き継がれる。

 もう、一年以上も前からなのだが、わたしは、いつも夜中に意識が動きだし、文章がひらめく。それをスマホにメモし、再び眠るという日常があった。

 昨年の八月、ライオンズゲートといわれるものが開いているときは、強いエネルギーの影響を受けたのか、その間の夜中中、意識が動きっぱなしで睡眠が浅く、常にインプット状態が続き、アウトプットが全く追いつかない状態だった。
 わたしはかなり疲弊していた。
 
 それに近い状態がその日の夜中にも訪れた。
 ふと意識が動きだしたのは、まだ朝の三時半にもなっていないころ。いつもなら、片目だけを開けて、半分、頭が寝た状態でスマホにアウトプットするのだが、この日は、妙に頭がクリアだった。
 両目を開け、ふと思い立ったことを確かめるために、スッと起きて、隣の部屋にスケジュール帳を取りに行く。暗くて見えないので、懐中電灯で照らして読むほど、意識がクリアで熱心な自分に驚いた。
 ヒラメキとノートの内容をつなげ合わせ、スマホにメモしていく。
 次から次にいろんな内容の文章が湧いてきた。気がついたら五時半。この間、少し眠ったかもしれない。
 インプットしたものを、Twitterで発信した。
 もうちょっと寝かせてほしいと思いながら。

 朝の家事をしているときも、入れた情報を早く出したくて仕方がなかった。
 インプットした情報を整え、気づけば十四時過ぎまで、飲まず食わずで発信し続けた。
それでもまだ、データはスマホに山積み状態。

 Twitterを開くと次々とシンクロが起こる。そしてひらめく。アウトプットする。その繰り返し。

 新しい出会いがウェーブのように押し寄せ、多くの人とつながった。
 楽しくて仕方がなかった。

 このエネルギーが呼び寄せたのか、もう交流することはないだろうなと諦めていた人が、三ヶ月ぶりに現れるというサプライズも経験した。
 かなり動揺し、文章なんて書いていられなくなった。

 急に思い立って、〈プリシラ〉いうTwitter名に、〈クリエイティブヒーリングArtist〉とつけ加えたのも、たぶん、このエネルギーの影響だろう。

 これがゾーンというものなのか。いいや、本物のゾーンはこんなチョロいものではないだろう。ハイ状態というのか、昨夜からの睡眠が浅いにもかかわらず、疲れはなく、頭は冴えていた。

 keikoさんの記事を見に、ブログへ飛ぶ。
 すると、どうだろう!
 前日に引き続き、うれしい偶然が重なる。
 記事にはこう書かれていた。

 〈足裏ケアで身体エネルギーを浄化する〉
 全身の神経って、最終的には、“足裏”にたどり着く◎
 だから、体力や集中力がほしい時には、裸足で森や浜辺を歩き、
 地球のエネルギーを足裏よりチャージ!
 
 まさに、わたしが昨日していたこと。
「あ~、それでエネルギーをチャージしたから、どんどん情報が入ってきて、こんなに疲れ知らずでアウトプットできたのね」
 そう納得した。
 改めて、自然エネルギーの大きさを実感する。

 もう一つ、気づいたことがある。
 keikoさん情報から、月が魚座に入り、海王星が逆行していることを知る。
 これは占星術的に、自分がなにに傷ついていたのかを知り、自分を思いやり、いたわり、癒やすのにいい時期らしい。
 
 わたしの太陽星座は魚座。
 だからより影響を受けて、山に登りながら珍しく泣いて、過去の自分の傷を癒やしていたのねとわかる。

 今日は〈夏越しの祓い〉といわれる輪抜け祭りの日。
 散歩の途中で気づいたので、大きな茅の輪をくぐって厄をはらい、今年残り半分の無病息災を祈ってきた。

 いつにも増して、塩の減りが速いから、〈伯方の塩〉も、はじめて買った。

 シンクロと浄化の嵐が吹き荒れていた。

 いままで経験したことがないほどの、マグマのように強いこのエネルギーの余波は、山に登ってから、当日も含め、もう、五日間続いている。

 このまま流れに乗っていきたい。


 そう書き終わり、席を立ってから、ふと先週末に引いたYouTubeタロットを思い出した。
 〈今週の出来事と流れ〉というタイトルだった。
 スマホを開いて、わたしが引いたカードの説明をもう一度聞く。
 出ていたのは、ワールドと審判のカード。

〈一つの流れに乗る完璧な状態。全てが切り替わっていく、すごく大事な一週間。いまできること、これからやってみたいことを、ひるまず焦らず、タイミングがきたら、いっきに畳み掛けていく。ついに来たな、という感じがしています〉

 そう、まさに、そんな感じ。

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