2:二度目のおんぎゃー!

文字数 1,428文字

むかしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんが暮らしていました。
お爺さんは山へ芝刈りに。お婆さんは川へ洗濯にいきました。

お婆さんが川で洗濯をしていると、大きな桃が、どんぶらこっこ、すっこっこ、と流れてきました。

驚いたお婆さんは家に桃を持ち帰りました。

そして、お爺さんが桃を食べようと切ってみると、なんと、中から珠のように可愛い赤ちゃんが飛び出してきたのです!

おんぎゃー! おんぎゃー!

(お爺ちゃん、お婆ちゃん。お久しぶりでございます)

こいつは驚いた。桃の中から元気な赤ん坊が生まれてきおったわい!
元気な男の子ですよ、お爺さん。きっと子供の居ない私たちに神様が授けてくれたんですねぇ。
おぉ、おぉ。ひと目みただけで赤ん坊が男の子かどうか見抜くとは、さすが婆さんじゃ。
いやですよお爺さん。ちょいと股間を見てみたら、珠のように可愛らしいおちんちんが付いていた。それだけですよ。
なるほど! 股間だけにタマとは、上手いことを言うもんじゃ。わっはっはっは!
あら、そんなつもりは無かったのですけど。うふふふふ。
ばぶー!

(ああ、こういうやり取りをしょっちゅうしてたっけ。懐かしいな……)

ばぶあうー!

(だが、やはり記憶は受け継いでいないようだ。どう見ても私のことを知っている様子ではない……少し寂しいが、仕方ないことか。)

そうじゃ! この子に名前をつけてあげないといかんな!
あら、いい考えですね。こんなに可愛らしいんですもの、とびきり良い名前を考えなくちゃね。
きゃっきゃ!

(もっもたろう! もっもたろう!)

よしよし、それじゃ桃から生まれたから……りんご太郎はどうじゃろうか。
!?

(!?)

お爺さん。どうして桃から生まれたのに、りんご太郎なんですか?
ばぶばぶ!

(そう! それ!)

急に……りんごが食べたくなってなぁ。
ああー、そういうことでしたか。
ばぶあー!!

(納得しないで! そんな理由で私の名前を決めないでください!!)

あぶばぶー! ばばぶー!!

(こーれ! 桃! 桃が大事なんです!!)

おや、この子が急に桃を叩き始めたぞ。
きっと、桃にちなんだ名前を付けてくれと言っているんじゃないでしょうか。
ばぶ!

(やった、さすがお婆ちゃんだ!)

そうかのう? 儂には桃が食べたくて癇癪を起こしているようにしか見えんわ。食い意地の張った子じゃ。
ぶぁぁぁーー!!

(こっの、クソジジイ……!!)

桃が好きでもいいじゃないですか。ちゃんと桃らしい名前を付けてあげましょう。
ふむ、それじゃあ桃から生まれたから桃太郎というのはどうじゃろうか。
あら、素敵じゃないですか!
ばぶぅ! ばぶぅ!

(やっと桃太郎と呼んでくれた! 嬉しい!)

あらあら、桃太郎も名前が気に入った様子ですよ。ずいぶん嬉しそうにはしゃいでいるわ。
ほっほっほ! どうれ、桃太郎。抱っこしてやろう!
きゃっきゃ! ばぶー!

(当然だが、こうしてお爺ちゃんに抱っこされるのも久しいな……)

……桃太郎。お前は儂と婆さんの宝物じゃ。元気に、丈夫に育ってくれ。それだけが儂らの望みじゃ。
あばぶー……

(ごめんなさい、お爺ちゃん。私は二人の願いを叶えてあげることができなかった……)

ばばぶばーぶ!

(……それでも鬼達を放っておけば、やがて人間は全て奴らに喰われてしまう。それだけは、どうしても防がねばならないのです。)

ほーれ、高いたかーい!
あうばー! きゃっきゃ!

(ですが、今度こそ私は鬼を倒してみせます。人々のために。そして何よりも、二人の願いを叶えるために……!)

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登場人物紹介

名前:桃太郎

言わずと知れた桃ヒーロー。

鬼ヶ島の鬼によって殺されたが、謎の存在の力で二週目を生きることになった。

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