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文字数 610文字

 私は唖然とした。
 まさかな・・・まさか?消臭剤か?!
私が、彼女の好きなフェロモンを出していたのか?人間は、特に男は自分の匂いに無頓着だ。
他人に言われて、初めて気が付く程だ。
だから私は気を付けていたが。
まさか自分自身に、人を惹き付ける匂いが存在しようとは、思ってもみなかった。

 私は沈黙の中、お酒を飲むと。その日は彼女と別れて酒場へと向かった。
酔ったところで、何が出来るのか。どうしたら良いのか、分かる訳も無かったのだが。
その日から私は消臭剤を使わないようにして。
 しばらく日を置いて、彼女と待ち合わせの電話を掛けたが。彼女は考えさせてくれを繰り返すばかりで、最早二人の関係は、風前の灯と成っていた。

 そんな馬鹿な!と私は思ったが。
そこは研究者、冷静になって考えた。
私にとって大事なのは、仕事でも出世でもなく彼女だ!と初めて分かった気がした。
失いたくなかった。
 そこで私は新たな研究を始めた。
今度のは簡単だった。
今、作っているものは『有臭剤』だ。
真逆の発想だ。むしろ、この方が人類の為になるとも思えてきた。

 つまり、人の持つ人間臭を際立たせる物だ。
私は何度か失敗しながら、数ヶ月でそれを完成させ。何とか、別れると言う言葉を彼女に言わせないで過ごし。
久々に会う約束を取り付けた。

 当然、今度は匂いだけでなく。
結婚指輪を持参して。
高級なレストランを予約してだ。
臭いだけで嫌われては、
たまったものではないから・・・。

 終わり。
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