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文字数 594文字

 私の様な仕事の者は、感覚が敏感でないといけない。だから家庭のストレスなどで、その感覚が失われるのではないかと恐れたのだ。
だが、出世してしまえば、研究員ではなく研究員を使う側に回れる。
それなら安心だと、私は結婚を決意したのだ。
まだ出来上がってもいない商品だが。
私はテンションが一気に上がっていた。

 後悔は無かった。私は突然のプロポーズで、指輪とか用意してなかった。
彼女は、そんな事気にしない。むしろ自分の気に入った物を買ってもらった方が、喜ぶタイプだ。私は指輪やアクセサリーを選ぶセンスが無いのだ。

 彼女に以前言われた事がある。
サプライズは嬉しいけど、指輪は一緒に買いましょうねと。
それが遠回しな求婚である事は分かっていたが、私は苦笑いで誤魔化したものだ。

「結婚しよう。今度の発明で出世すると思う。
いや関係無い。君が好きなんだ。
もう君と離れて暮らすのが堪らなくなった。
お願いです。結婚してください」

と食事が終わって、お酒を飲みながらそう言うと。彼女は喜ぶかと思えば、不思議そうな顔をして。

「しばらく考えさせて」

と答えた。私は血の気が引いてしまった。
 まさか別れるつもり?
そんな素振りは無かったのに。
他に好きな男でも?と色々考えてしまった。
すると彼女は、

「あなたを嫌いじゃないし、嬉しいのよ。
でも何だか、あなたが変わった様な気がするの今までとは違う。
何だろう?上手く説明出来ない」

と言った。
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