第1話

文字数 1,051文字

 日本海沿岸に面した山形県には庄内砂丘がある。庄内砂丘は鳥取砂丘、吹上浜砂丘とともに日本三大砂丘のひとつとされている。その長さは 35 km、面積は約 55 ㎢ を誇り、長さ日本一の砂丘である。
 その庄内砂丘は、冬、庄内に「地吹雪」を引き起こす強い季節風から住民や農地を守るために 300年ほど前からクロマツが植林されてきた。先達の努力によってできた立派な防風林によって、砂漠のような不毛の地が一変し緑豊かな砂丘の農地に変わった。この気が遠くなるような苦労に、頭が下がる。
 庄内砂丘は海洋性気候で、夏は日照時間が長く日差しが強く暑い。夜は涼風が吹き温度が下がり、昼夜の寒暖差が大きい。そして、水はけがよい。また庄内地方は、東に月山、北に鳥海山、南に朝日連峰と、三方を山に囲まれていて、これらの山々の雪解け水が良質な地下水となって流れている。これがメロンの栽培に最適なのだ。
 だから庄内砂丘メロンは糖度が高く、瑞々(みずみず)しくて香りがよく、高品質なのだ。アンデスメロン、鶴姫、クインシー、マリアージュなどの品種のメロンが栽培されている。その生産高は全国第4位である。

 そんな猛暑日が続くある日の早朝、酒田から日本海沿岸に沿って走る片側一車線の国道 112 号線は、ノロノロ運転の車で渋滞していた。渋滞の列の先頭車は(はる)か先で、まるで停まっているように見えた。皆、対向車線の車列の隙間を見計らって先頭車を追い越していく。
 先頭車が近くに見える所まできた。先頭車は荷台にメロンが詰まった段ボール箱とその隙間に大玉のメロンを山積みにした軽トラックだった。速度は時速 20㎞ 以下だ。おそらく朝もぎした庄内砂丘メロンを国道沿いの直売所に運ぶ途中なのだろう。
 よく見ると山積みしたメロンが荷崩れしたのだろう。車体は左に大きく傾いていた。数個の大玉のメロンが、荷台の左から今にも落ちそうになっている。ひとつ数千円する高価なメロンだ。落としたら大変だ。3つも落ちたら1万円がパーになる。
 追い抜きざまに見ると、運転しているのは爺ちゃんだった。時価ん十万円相当のメロンを運んでいる。両手でハンドルを握り緊張していた。落とさないようにそ~っと運転せざるを得ない理由が分かった。成る程の~(笑)

 さて、写真は庄内空港近くの砂丘メロンのモニュメントだ。

 背後の地面に立つ金網のすぐ向こうは 2,000m の滑走路である。滑走路の脇に庄内砂丘メロンのモニュメントがある空港、さすが「おいしい庄内空港」だの~。

 んだんだ!
(2023年8月)
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