第2話(1)また悩む

文字数 1,160文字

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 あらためてわたしの名前は最寄田静香。16歳。この春から高校二年生だ。

 さて、つい昨日、『新宿オルタナティブ学園』の二年生に晴れて進級した記念すべき日だったのだが……なんとも驚くべきことがあった。学園名変更? 残念ながら違う。

 ……白髪でイケメンの陰陽師と会ったのだ。いや、何を言っているのだと思われるのも分かる。わたし自身も同じような気持ちだからだ。最初はその恰好から、どこかの神主さんかと思った。神主さんにナンパされるとはまったく予想だにしていない。戸惑いつつも話を聞くと、その白髪イケメンの男性は、明石家天馬さんと名乗り、自分のことは陰陽師だと言った。馬鹿馬鹿しいと思ってしまった。陰陽師なんて映画や漫画、とにかくフィクションの中の話だと思っていたからだ。過去に――平安時代? 千年前?――そういう役職の方たちが本当に存在していたことくらいは知っていたが。何故現代の新宿に?

 天馬さんは整った顔立ちで柔和な笑みを浮かべた。人によっては、それだけで警戒心を解く人もいるだろうし、むしろ警戒心や猜疑心を強める場合もある。わたしの場合は後者だった。ごく普通に生きてきたつもりなのに、陰陽師さんに話しかけられるとは思えない。そりゃあ、高校に入学してからは不幸な体質に改善?――この場合は改悪か――したように感じていたが、それが現代日本に今何人いるのかも分からない陰陽師さんの知るところになるだなんて、本当に想像もしていない。

 しかし、天馬さんが言うには、わたしは妖を引き寄せやすい状態――ベタに言うと霊感が強い。言い換えれば妖力アンテナがビンビンに張っているとか……ダサいので、前者を採用――に突発的になっているという。実際昨日、三つ目小僧に遭遇してしまったのだから、信じるしかない。まさか一般人のわたしにドッキリを仕掛ける意味もない。この学園は人に悪戯するような妖たちの通り道だという。わたしは天馬さんとともに『祓い屋』として、妖撃退にあたることとなった。そんな……わたしは唖然とするしかなかった。

 ……まあ、嘆いてばかりもいられない。天馬さんの話では、妖の出現頻度というのは週に一度か二度らしい。ボランティアだと思えば良い。履歴書にはあまり詳しくは書けなさそうだけれど。前向きに捉えることにしよう。……うん?

「……」

 何やら校舎前がざわついているな……。平和に過ごしたいところだが……む?

「ああ、グッドモーニング! いや、おはようか。とうとう出会えたね……」

 アメコミ映画から飛び出してきたヒーローのような恰好をした、栗毛色の髪の男性がわたしに向かってにこやかに挨拶をしてきた。

「ど、どなたさまでしょうか……?」

 わたしは困惑気味に応える。新年度二日目、またもや予想外の幕開けだ。
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