第3章 人気と不人気の邂逅
文字数 2,221文字
利家が編集長に通達されてから一週間後...遂に約束の日がやってきた。
利家は自分のパソコンと新作が収録されているUSBメモリが入っているバッグを抱えながら、編集部の前に立っていた。
しかし、あまりにも緊張をしていたのか、棒立ち状態から一歩も動いていなかった。
緊張している利家にまつが話しかけてきた。
利家は驚き、絶叫した。
まつは胸を撫で下ろした。
利家はまつの毒舌に軽く落ち込んだ。
利家とまつは一緒に編集部へ入った。
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本来なら九ノ瀬の小説を私が読んだ後にまつさんに読んでもらい、九ノ瀬にはまつのさんイラスト集を見てもらう予定だったが、同時に来てもらったんじゃ、話は早い。
ここで私が読んだ後にまつさんが九ノ瀬の新作を読み、九ノ瀬の新作に登場するキャラクターをまつさんに直接描いてもらいたい
利家とまつは編集長に案内され、面談室へ移動した。
利家はかばんからパソコンを取り出し、電源をつけた。そしてワードを開き、自分の新作小説を見せた。
小説のタイトルは『異世界転生したのにチート能力が使えない』である。
あらすじは『ある日交通事故で死亡した木村直樹は異世界に転生された。直樹は異世界で無双できると期待していたが、技はなにも使えず、ゴブリンにすら敗れる有様であった。そこで直樹は強いパートナーを募集したが…』
である。
編集長は真剣な眼差しで利家の新作を読んでいた。
利家は編集長に恐る恐る訪ねた。
しかし、今時弱い主人公が強くなる系のものが受けるかどうかが微妙だな…
ラノベ界で今受けているのは最強系の主人公だからな…もっとも、主人公が最強過ぎたらそれはそれで叩かれるんだけどな。まあ、評論家気取りの読者様はとても天邪鬼なのだよ
編集長はパソコンを反対側(まつと利家が座っている方向)へ向けた。
まつも編集長同様、真剣な眼差しで利家の新作を読んでいた。
まつは本を読み続けているうちに、目の輝きが増してきた。
利家とまつはいつの間にか意気投合をしていた。
編集長は、2人に仕事内容と締め切り期間を伝えた。
編集長はそう言い残し、面談室を後にした。
こうして、不人気ラノベ作家大人気イラストレーターの二人三脚が始まった。