第13話 ミラとルーカス、ゴルド、チツゴ義兄弟

文字数 1,795文字

 エレナから、彼女の旧領の状況、ロジャーから魔界の状況が説明された。ロジャーは、エレナに軍の状況を尋ねた。彼女はジョナサンに説明を命じた。ジョナサンは、軍の訓練状況を説明した。
「ところで、サンマルチノ殿。スルー国のミラとやルーカス達3義兄弟は、どういう人間達なのですか。確か、お会いになられたことがあるということでしたが。」
「どこからお話ししていったらと思うと。」
 彼はしばし言葉に困ったことを謝った。大きく息をしてから話を始めた。
「ルーカス殿は、もう50を過ぎていますが、最後に会ってから数年になりますが、とにかく、生臭いがとても魅力的な方でしたな。義兄弟のゴルド、チツゴ殿は武勇の人でした。少なくとも、最後に会った、40半ばの頃でも全く衰えがありませんでした。それで、ミラー殿ですが。」
 マリアとエリナは、生臭いが魅力的、という表現に首をひねった。
 いったん言葉を切ってから、おもむろに続けた。
「頭脳明晰、変幻自在、私心なく、誠実、忠義に厚く、かの国を10年足らずで安定させ、強国にした名宰相でもあります。が、しかし。」
「しかし?」
「それが、全てルーカス殿への忠節に捧げられているということです、問題は。」
「他人には、手段を選ばない謀略家となるわけか。」
「まさに、その通りです。私も、当初、誠実で私心のない、裏表のない方だと思ったものです。しかし、いくつもの国が、いつの間にか破滅させられて、征服されるのを見てから、考えが変わりました。」
「恐ろしい男というわけか。」
「ええ。周辺を征服し続けながら、シルバーランド連合の後押しをしながら内部を浸食しています。そして、108人の勇者がいるという噂も。真偽は分かりませんが、そのような奴に相まみえたことがありましたが、話半分より上という程度の実力者でしたね。」
「それでも脅威ですね。」
 ロジャーは、唸った。
「どちらにせよ、まずはポー国を取り戻すことが先決だろう。時間が経過すればするほど、相手は大きくなる。我々が動けば、流れがこちらに来る。しかし、時間がたてば、こちらに来る流れが少なくなるぞ。」
 マリアの発言に、沈黙が始まった。それをロジャーが破った。
「ジョナサン。すぐ出陣出来る兵はどのくらいだ?」
 ジョナサンはしばらく考えた。
「1000なら、明日にでも。」 
 重々しく答えた。窺うように、皆がバディの方を見た。
「1週間後、集められるだけの兵力で出陣する。目指すのは、王都。目的は王都の解放、救国、売国奴の排除だ。」
 うなずいたものの、直ぐには誰もそれに続かなかった。
「多くはないが、我が魔族の軍も加わらせよう。」
 マリアが続いた。
「少ないが、私の領地の人間、亜人、魔族の兵をかき集める。」
バディがそこまで言ったため、今度はエリナに視線が集まった。“正念場?決断の時ね。”
「そうですね。」
 いったん言葉を置いてから、
「動きましょう。全ての準備を。カーベンターを通じて、我らの大義名分を広く伝えさせましょう。」
“大義名分を作りだしてもだ!”
 3人は、心の中で合唱していた。
“大義名分は、作られていくものか。”
 ジョナサンは、納得するように思った。そこまで来て、他の者達も積極的に応じた、
 本来なら、明日1000名でも出陣したいところだが、ジョナサンが言ったのは単に出陣するだけならということだった。1週間はどちらにしても時間が必要だった、準備のために。それまで相手が待ってくれるかどうか。多分待たないだろう。誰もがそう思った。
「我とバディの二人が、各地で暴れまわって牽制、混乱させよう。」
 マリアの言葉に皆が顔をほころばせた。それを受けるように
「ロッカ殿、あなたのチームを率いて周辺地域に先遣隊として先に進んでいただきませんか。そして、ブルーノー殿、サンマルチノ殿もそれに参加してもらえませんか。相手が少数なら撃破し、各地で説得していただきたい。リンチ殿は、もしものため、エレナ様の元に待機していただきたい。」
 ロッカの元にいる兵は、100人足らずだが、精鋭揃いだし、ブルーノー達が加われば数倍の兵を相手にできる。相手の先鋒を先手を打って撃破はできる。
「わかりました。私とジョナサンも、一日も早く、集められるだけ集めた本隊を率いて出発します。リンチ殿達とともに。」
 エレナが、宣言するように起ち上がった。
「まず、ポー国を解放するために。」
 



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