第2話 突然の別れ

文字数 1,428文字


「へん! しん!」
 ……無。

 え? 変身ってもなにも怒らんぞ?
 なんだってばよ? この力。
 
『…ねん……少年』
 微かに頭の中でどこかからおっさんの声が聞こえる。
 あ、俺もおっさんの部類か。(34歳)

「なんだ? お前、さっきのやつか」
『そうだ、ミスターサンダーだ』

 どうやら俺の頭の中に、直接話しかけているようだ。
 こいつが脳内にいると思うだけで、イライラがMAXだ。

「で? 俺はどうなった?」
『単純に言えば、君は生き返った』
「んなことは見たらわかる。しかし、なんだこのマッチョゴリラ体形は?」
 自分で自分の厚い胸板に手をあてる。
 巨乳なみにおっぱいがでかくなってて草。

『それは君の基礎能力をあげた効果だ』
「つまり?」
『先ほど、クッソ寒い言葉などせずとも、君はもう既に能力を手に入れた』
 今ディスったよな、こいつ。

「じゃあ常に変身した状態か?」
『そうとは言えない。私は君に‟ミスターサンダーの2代目”を引き継いでほしい。その為の種をまいたに過ぎないのだ。あとは君の頑張り次第で能力は更に開花される』
 なにそれ? お勉強とか体育とかと、ほぼほぼ変わらなくね?
 今流行りの最初から‟俺TUEEE”で無双したかった……。

「ていうか、なんで俺がミスターサンダーとかいう、オワコンのヒーローを引き継ぐの?」
『それは私が初めて死者を出してしまったからだ』
 ああ、俺のことね。

『私はヒーローになったとき、決めていた。絶対に死者を出さないと……もしその時がくれば、誰かに自身の能力を与えようと』
 なにその上から目線。
 お前の能力なんて金になんねーよ。

「で、具体的になにをすればいい? 俺はヒキニートだ。先立つものなんてなにもない」
『……それは私は知らん。社会復帰しなさい』
 ぐはっ! ひきこもりに一番ダメージな言葉を。

『そして、人を救いなさい』
「誰を?」
『全員だ……君が救うべき対象を見つけたら、私の託した力で戦えば、普通の人間ぐらいならワンパンで倒せるだろう』
「人間ぐらいって……まさか、特撮のときみたいな怪人とかでんのかよ?」

『ではまたいずれ……』

「あんのクソ特撮! 逃げやがったな!」


 10分後、とりあえず、自室から出て、廊下に向かう。
 尿意を感じたためだ。

 便器に向かうと、みたことないようなミサイルが俺の股間に生えていた。
「ナニコレ?」
 どっか人様のものをパクったのかな……。
 俺は確か『デリンジャー』なみだったのに。

 排尿を終えると、リビングに向かう。

 
 そこには驚愕の光景が待っていた。

「親父! 母さん!」

 二人とも目を見開き、泡を吹いている。
 昨日まで元気だったのに……。

 慌てて、親父の胸に耳をあてる。

「止まっている……」

 口元にも手をあてたが呼吸を感じない。
 同様のことを母さんにも試したがピクとも動かない。

「う、うそだろ……親父とかーちゃん、死んじまっているよ!」

 そんな……別れも告げられずに……俺は……。
 クソッ!

 ~翌日~

 20年ぶりに親戚一同が集まり、お葬式を終えた。
 
「まあ福助ったら、大きくなったわねぇ……」

 だいぶのボケの入った遠い親戚のおばあちゃんである。

「ま、まあ最近、筋トレにハマってて」
「あらあら、もう働けるんじゃないかしら……」
「そっすね」

 やべぇ! 親父とかーちゃん死んだから年金もねぇ!
 働くという選択肢を、生まれてこの方考えていなかった……。
 ど、どうちよ……。

『少年、お葬式が終わったらハローワークにいこう』

 うるせぇ!

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