あ行

文字数 4,562文字

【青い影】
 鉱晶闇取引の世界において、数百年前からその名を馳せ続ける宝石商一家。組織の本拠地、人員構成、商材の調達経路など、あらゆる情報が全くの謎に包まれている。歴代のすべての組織構成員がそろって青い瞳の持ち主であったという伝説に由来して、この名で呼ばれる。

【青写真(発顕(はっけん)躯体)】
 ある特殊な能力を宿すカセドラを建造するための設計図。グリュー・ケアリ率いるホルンフェルス王国軍の一個小隊によって、大陸北西部の白砂化地帯で発見・回収された。顕世暦1771年夏現在、この設計図を基に造られたカセドラは世界に一体しか存在しない。

【青写真(汎用躯体)】
 巨大人型兵器〈カセドラ〉の基礎設計図。古代文明の遺物〈創星譜(第二巻)〉の解読に成功した結果、人類はこれを手に入れた。世界各地に現存する多様な型式のカセドラも、元を辿ればたった一枚のこの設計図に起源を持つ。

【アクアナイト】
 一生を終えたアクア族の遺体が結晶化したもの。天文学的な量の発顕因子が宿るとされる。

【アクア族】
 現生人類の出現以前に地上で支配的な種として繁栄していたといわれる、いわば原初の人類。遥かな過去の時代に絶滅したとされているが、伝説によるとアクア族は誰もが生まれながらに超高度な顕術を操ることができたという。

【アサクヒデンデンダケ】
 アルツェクロ大陸北部の林や森に自生するキノコ。火を通すと食べられるが、見た目がそっくりな〈クタグルルムルダケ〉という毒性の強いキノコがほぼ同地域に分布しており、採集・摂食には細心の注意が必要。

【アストラッド・シンメンタール】
 ハスキル・エーレンガートの父親の次兄の前妻の長姉。したがってハスキルとはまったく無縁ともいえるほど縁遠い親戚だが、幼い頃の彼女をとても可愛がってくれた。大戦後しばらくして実業家の夫を病で失い、以来とある保養地の小さな古城で家族や友人たちとホテルを営んでいる。

【アトマナイト】
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【アトマ赤疹(せきしん)羽化熱(うかねつ))】
 成長期を迎えたアトマ族が必ず罹患(りかん)する宿命の病。発症すると高熱や全身の激痛に見舞われ、背中の羽が赤い瘡蓋(かさぶた)に覆われる。二、三日ほどかけて瘡蓋が乾き剥がれ落ちると、以前より透明度と強度を増した新たな羽に生まれ変わる。なお、この病変が生じて治癒するまでのあいだ、患者の身体からは人間の身体にまで影響を及ぼす特殊な細菌が発生する。これに感染した人間が未だ発育途中の若年者である場合に限り、発熱や頭痛、喉の痛みといった風邪に似た症状が現れる。ただし一度感染すると抗体が生成され、二度と感染することはない。

【アトマ族】
 アクア族や現生人類よりも先にこの世界に出現していたとされる知的生命体。現在も現生人類同様に世界じゅうで繁栄している。姿形はアクア族や人間のそれとそっくりだが、人の手のひらに全身が載ってしまうほどにその体躯は小さい。かつ、額には猫のしっぽのように長く柔軟な二本の触角を、背中にはトンボのそれのように透明な二枚の羽を備えている。両耳の先端が少し尖っている。人間とは違い、アトマ族は誰もが生まれながらに顕術を操ることができる。羽を広げて自在に空を飛び回る姿から、しばしば「妖精」と例えられる。身の周りのイーノ波動を感知する能力が先天的に発達しているため、大半のアトマ族が平穏を求めて人里から離れた環境で暮らすことを好む。身体の成長速度が人間のそれとは若干異なり、アトマ族の場合はおよそ35~40歳ほどで人間でいう大人の姿になる。そのため二十代や三十代前半頃であっても、少年少女のような見た目をしている(なので二十代であっても少年や少女と呼ばれることがしばしばある)。絶命するとその瞬間に全身が微細な砂状結晶に変化し、またたくまに風に溶けて消えてしまう。ごく一部の例外を除いて、基本的には人間の政治活動や軍事行動に関与することはない。

【アトリーの扉】
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嵐ヶ峰(あらしがみね)
 アルバンベルク王国領の北端にある岬。同時に、大陸本土の最北端に位置する地点でもある。北の荒れた海上に突出する細く険しい岬であり、その突端には大地の極北を示す石碑が立っている。古き時代から現代に至るまで、数多くの冒険家や旅人たち、そして巡礼者たち(イーノ聖教徒)を惹きつけてやまない。

【アリア】
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【アリアナイト】
 世界各地の地中に埋蔵されている鉱物資源。源素〈イーノ〉そのものが結晶化した物質であるといわれている。その透明度、重量、規格、加工品質によって等級が分けられ、最高級のものとなると国家が直々に管理・保護するほどの価値を持つ。人間やアトマ族が放つ顕導波に反応する性質を持ち、いにしえの時代には魔女の杖の装飾や占い師の水晶玉として、現代においては顕導力学製品の主要資材として活用されている。カセドラの躯体の大部分にもこの鉱物が原料として用いられている。

【アル】
 ドノヴァン・ベーム博士と一緒に暮らすアトマ族の五つ子のうちの一人。前髪を右側で分けている男の子。五人のなかでなぜかこの子だけ慢性鼻炎持ち。

【アルツェクロ大陸】
 物語の舞台である、ほぼ一続きの超大陸。いくつもの国家と多様な自然景観を抱える。惑星上においてこの大陸の他には大陸と呼べるほどの陸地はなく(ただし島々は無数に点在する)、近代的文明の発達した人類の居住地も大陸外には確認されていない(ただし原始的な文明社会はいくつか存在する)。よって人々が「世界」と言う時、それはほとんど「大陸」と同義であり、そして「大陸」と言う時、それはしばしば「世界」そのものを指す。

【アルバンベルク王国】
 大陸最北端に位置する国。主要産業は漁業、交易業、製材業、酒造業(蒸留酒)。おもに南部と東南部の沿岸地域を中心に栄えている。危険な野生動物が多く生息する中央から西部にかけての大平原、そして大小さまざまな火山が展開する北部のあたりには、ほとんど人間の居住地は存在しない。国土の最北端に〈嵐ヶ峰〉と呼ばれる雄大な岬があり、古来より旅人や巡礼者たちを惹きつけてきた。また、北部の火山地帯に点在する天然の温泉は、世界じゅうの温泉愛好家たちから熱い視線を集めている。

【アルベフ】
 顕世暦における12の月のうちの2番目の月。冬の盛りを越えて春を夢見る月。

【アルマンド】
 ホルンフェルス王国の主力量産型カセドラ。「ホルンフェルス式汎用巨兵鋳型(いがた)第一番」採用躯体。通称〈春騎士(はるきし)〉。人類が建造に成功した最初の完成形カセドラとして、世界じゅうでその名を知られている。鎧の色は鮮やかなピンク。高い機動性と精密な駆動性を誇り、しばしば世界最優秀の量産機と評される。

【アンセルメ連邦共和国】
 コランダム公国のすぐ南に位置する国。景観に恵まれた保養地や観光地を数多く内包する。主要産業は観光業、林業等。

【『怒りの戦士タンバリン』】
 シュナーベル家のメイド、カスタネット・アルコットが少女時代に実家で書いていた小説。全22巻。悪事をはたらくおとなたちを容赦なく成敗するタンバリンという少年が主人公で、カスタネットの周囲のおとなたちはこの作品に密かな恐怖を感じていた。

【イーノ】
 万物万象の源となるもの。〈源素(げんそ)〉。全宇宙を構成するありとあらゆるものが、たった一つのこの源素から出来ているといわれている。大陸のほぼすべての地域において、ほとんど「神」や「創造主」と同義のものとして認識されている。世界には多様な宗教が存在するが、そのなかでイーノを信奉しないものは一つもないといわれている。

【イーノ神教(しんきょう)
 世界で最も信仰されている宗教。いにしえの聖人たちによって編まれた聖典に基づく教義が存在するものの、実生活の面ではこれといった戒律や規則は設けられておらず、自然を慈しみ、他者を助け、日々朗らかに学び、個々人の心のまま祈ることを()しとする。世界各地に大小さまざまな教会を持つが、それらも基本的には「万人に開かれた家」として機能し、まったく権威的なものではない。この宗派の教えを人々に説く者を「伝道士」と呼ぶ。

【イーノ聖教(せいきょう)
 世界で二番目に信者の多い宗教。イーノ神教とは赴きが異なり、禁欲と節制、日常的な礼拝への出席と祈祷祭儀への参列を厳しく推奨される。この宗派の教えを人々に説く者を「聖教士」と呼ぶ。

【イサク】
 アクア族の末裔の一人。ルータの妹。老師クレーは実の祖父。リディアは物心つく前からの親友であり、彼女がこの世の誰よりも心を許す相手。兄に似てとても小柄で、真っ白で短い癖毛の髪を持つ。度数の入っていない眼鏡をいつもかけている。性格は淡泊で少々つっけんどんだが、根は自然や動物を愛する心優しい女性。本名は〈イサク・イィニアス・ユメノ・クァケイラ・アクアリス〉。古代アクア族の言葉で「創造主の愛が結晶となったアクア族ユメノ家の娘イサク」という意味。

【イスエルテム】
 長さの単位。1イスエルテム=1センチメートル。

【イルジ】
 顕世暦における12の月のうちの7番目の月。夏の始まりを告げる月。

【ウィルコ・ゴライトリー】
 全世界で人気を博した小説家。代表作『妖精の剣士クーレンカンプの冒険』シリーズで知られる。

【ヴォツェック】
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【ヴォルフ・ホッター】
 〈ハリー&ライム商会〉タヒナータ支部を任されていた人物。商会の長であるハリーとライムの二人と親子の杯を交わした13番目の息子。若い頃は商船の乗組員だったが、幾度も暴力沙汰を起こすうちに闇社会に堕ちた。

【エーレンガートの丘】
 コランダム公国の南西部にある小高い丘。五十年ほど前からエーレンガート家の人々が管理してきた。

【エーレンガート女学院】
 エーレンガートの丘の頂上に立つ高等教育機関。創設者であるハスキル・エーレンガートが学院長を務める。顕世暦1759年開校。恵まれた環境と教育の質の高さから、周辺地域における評判はとても良好。学院敷地内には礼拝堂を改修した学生寮も併設されている。

【エグモント】
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【エジリン聖教国】
 大陸南方の海上に位置する島国。国土と都市が単一のものとして成る、いわゆる市国の形態をとっている。〈イーノ聖教〉の総本山。一年通して多くの巡礼者や旅行者が訪れる。国政を支えるのは観光業収入および信者たちによる寄付。

【エストレルラ】
 リヴォン・シュナーベルが搭乗するカセドラ。「ホルンフェルス式特専巨兵鋳型第四番」採用躯体。

【エリヒクライベル湖】
 大陸のちょうど中心部にある世界最大の湖。古代リズ族の言葉で「二つの心臓の大きな湖」という意味。湖上に大きな島が二つ浮かんでいることから、そう呼ばれるようになったという。

【エリム】
 長さの単位。1エリム=1マイル。

【エルテム】
 長さの単位。1エルテム=1メートル。

【エレクトラ・アーノンクール】
 紅雪騎士団に所属する若き女性兵士。その実力は組織内随一。

【オウジ】
 顕世暦における12の月のうちの1番目の月。新たな始まりを告げる月。

【オト】
 顕世暦における12の月のうちの10番目の月。風の薫る秋の月。

【オビ】
 古代リズの言語で「鳥」を表す言葉であり、リズの民の宇宙観・生命観を象徴する概念。彼らにとってこの宇宙は一羽の鳥であり、この世に顕現している万物万象はいずれも等しくその鳥の羽根であると考える。
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