新都市暦二一三年
文字数 449文字
不意に、音もなく扉が開け放たれる。
流れ込む風の先で、華やいだ少女の心帯声音 が広がった。
『ねえあなた、私 を雇いませんこと?』
ピアノ奏者が戸惑った表情で立ち上がる。心帯 声音 の主は迷うことなく柔らかな布靴を室内にすべらせると、貸し切られた小規模な演奏室の中、鑑賞席に一人座る男の前に立った。
灰青 の瞳に、金糸のような少女の髪が映りこむ。男は困ったような視線を彼女に向けた。
『申し訳ないけどお嬢さん 。今回、私が探しているのは子守ではないんだ』
丸く磨かれた月長石 のような心帯声音 で伝えると、十代前半と見える少女は笑い混じりの鼻息をこぼした。
『ええ。社運を賭けた一大事業に、無名だけども有能な歌僕 をお探しと聞いておりますわ。ユネイル社の社長、ユーロゥ・ユネイル様』
年に似合わぬ嫣然 とした笑みを浮かべると、少女は広げた右手を自身の胸に置いた。
緑柱石 の瞳が、強い輝きを帯びて男を見る。
『私 が歌って差し上げますわ、どんな歌でも、あなたの望むまま。だから、──私の主人になって一緒に世界を変えませんこと?』
流れ込む風の先で、華やいだ少女の
『ねえあなた、
ピアノ奏者が戸惑った表情で立ち上がる。
『申し訳ないけど
丸く磨かれた
『ええ。社運を賭けた一大事業に、無名だけども有能な
年に似合わぬ
『